過去ログ - 食蜂「好きって言わせてみせるわぁ」その4
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乾杯
◆ziwzYr641k
[saga]
2014/06/10(火) 03:24:13.67 ID:igNzDGpD0
(ちく、しょう。どうして……)
どうして自分は、自分の言葉は、こうまで無力なのか。
この軽蔑すべき人でなしに勝つことさえできないのか。
「そうそう……彼女が縋り付いている幻想、確かカミジョーとか言っていたか」
(あいつが、目の前で苦しんでるってのに……)
木原の物言いが、行いが。
「純粋に気持ち悪いねぇ。頼るべき家族を失い、親戚一同に疎まれ、信頼できる友人もいない」
(絶対に助けなきゃ、いけねえってのに――)
上条の根源にあるものを急速に蝕んでいく。
「何度か出会っただけの、知り合いかどうかも怪しいレベルの学生が、あの娘の正気を保っている唯一の存在だなんてね」
嘲りの言葉。実験動物に向けられる虚無的な眼差し。
「便器の淵にこびりついたクソみたいな記憶にいつまでも執着している。まったく、見るに堪えないよ」
悪意に満ちた表情でせせら笑う木原に、目蓋の裏で燃え上がるような熱を感じた。
上条が体を支え起こすべき両腕に力を込めた。
目の前で食蜂を傷つけているこの男が憎かった。
食蜂が目の前で傷つけられていながら何もできない自分の不甲斐なさが、どうしようもなく憎かった。
「まぁ、それも過去の話だ。上書きが完了すれば自我による記憶の修復も不可能になる。
洗浄された記憶を得て、彼女は晴れて我々の一員として、研究に貢献してくれることだろう。
我々は彼女を利用したいし、彼女は彼女で、心の奥底では誰かに必要とされたがっている。ウィンウィンの関係というやつだ」
男の表情を、言動を、信念を。
跡形も残らないくらいにすり潰してやりたい。
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