30:オーンスタイン ◆gijfEeWFo6
2014/07/23(水) 02:40:45.79 ID:nqQDmX8+0
「俺は芳乃の心だけは読めない。これは、どういうことなんだ?」
「ふふっ。乙女の心はそう簡単に読めないわけでしてー」
愛想笑いのようなものを浮かべて、芳乃は誤魔化す。
「…………」
疑問は残るが何にせよ、やはり彼女は超能力者だ。
俺は心を読めるだけだが、それでも今まで相当苦労して生きてきた。別に不幸だとは思わない。いつも孤独で辛かったのは確かだが、俺だけが知ることのできた幸せだってある。
ただ、どうしても心の底では欲しがっている。理解者を。自分の全てを受け止めて、共に歩いてくれる人を。
もし、同じ苦しみを抱えている人間と一緒になれたら……とても歪な関係だが、本当の意味で分かり合える関係を築けるのではないのだろうか。その関係に幸せがあるのかどうかはともかく。
そこまで考えて、すぐ隣にいる芳乃の顔が浮かんだ。掻き消すように首を軽く横に振る。
――芳乃にそれを求めてどうする。担当アイドルだと言うのに。それどころか、まだ十六歳じゃないか。馬鹿なことは考えるなよ、本当。
もしかしなくても、今もなお思考を読まれているのだろうか。
ちらりと横に視線を送ると、こちらをじっと凝視していた芳乃の視線とぶつかった。
「悪い。忘れてくれ」
「…………」
芳乃は何も言わない。
今までいらないと何度も思ってきた精神感応だが、心が読めないのがこんなにも不安になるとは思わなかった。
芳乃が俺を気味悪がっているのか、それとも別のことを考えているのか、まったく分からないからだ。
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