25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/20(金) 19:11:58.76 ID:aUpPVcxlO
「諸星」
いつだって笑顔で、周りの雰囲気を強制的に、と表現していい程に変えてしまう底抜けの明るさ。
誰の影響も受けず、誰の言葉にも躓かずひたすら我が道を行く強い少女。
それが諸星きらりだと――勝手に、思っていた。
「そんな訳、ないよな」
八九寺の言葉はあまりにも正鵠を射ている。
十七歳の少女が、そんなに強い訳がない。
諸星は、あの限界突破の性格と笑顔の裏で、いつだって誰かに助けを求めていたのだ。
「ごめん、諸星。僕はお前に謝らなくちゃいけない。僕は実際のところ、お前の何も見ちゃいなかった」
「暦……ちゃん……」
「聞かせてくれ、お前の言葉を」
天井にうつ伏せになっていた諸星は、身を起こし身体を反転させる。
天井に磔になったかのような格好で、諸星は口を開いた。
「……きらりね、みんなに笑ってほしくてアイドルになったの。きらりがアイドルやって、みんなハピハピできたらいいな、って」
それは出会って間もない頃に聞かされたのを覚えている。
自分よりも何よりも先に他人が優先されているその思想に、多少なりとも苦笑いが漏れたことも今では懐かしい。
「でもね、その代わりにきらりはおっきくて、元気なアイドル……みんな、そういう風にしか見てくれなくなったの」
人間の歴史において数百、数千の人間ために一人の人間が犠牲になることは度々あった。
それを一般的に尊い犠牲、または正義と呼ぶ。
諸星の純粋な想いの集大成を犠牲と呼ぶのには抵抗があるが、強引にまとめてしまえばそういうことになってしまう。
諸星はアイドルとして成功した瞬間、諸星きらりという人間は、個人ではなく公の人となってしまった。
その結果が、これだ。
39Res/42.70 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。