29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/20(金) 19:20:43.04 ID:aUpPVcxlO
005
後日談というか、今回のオチ。
歌い疲れて眠ってしまった八九寺をおんぶしながら、僕と諸星は帰途に就いていた。
あと一刻もすれば沈むであろう橙の太陽光を受けて、影が長く伸びていた。
あの後、カラオケ大会に発展した僕らはライブ中の星もかくやというテンションではしゃぎまくり今に至る。
「楽しかったね!」
「ああ、カラオケなんてまともに行ったのがいつかも思い出せないくらいだったからな、新鮮だったよ」
僕にカラオケに行く友達がいないとか言ってはいけない。
現役アイドルの諸星の歌声の素晴らしさはもちろんだが、しかし意外なのは八九寺だった。
小学生らしく、流行りのポップスでも歌うのかと思ったら演歌だった。
しかもかなりの美声。
「あ、阿良々木さん……パンツをそんなところに仕舞わないでください……!」
「どんな寝言だよ!」
そんなところってどこなんだよ。
僕の背中で八九寺がむずがるように身をよじる。
時折、体勢を立て直すと見せかけてお尻を触るのも忘れない。
僕の前で無防備にも寝てしまう八九寺が悪いのだ。
今回のことは、僕も考えを改めなければならない。
諸星だけに限らず、人には人の数だけの距離があって然るべしだ。
それに、時々忘れてしまうことではあるが、彼女たちはアイドルであると同時に、何処にでもいる女の子であること。
それだけは、僕だけでも必ず心に留めておくべき事項だ。
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