過去ログ - モバP「怪談をしよう」
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18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/06/20(金) 23:15:42.45 ID:e5IvpnBoo
P「まだあるんだ。次の話をしよう。
 話を一つ。夢の話。

少女は夢を見ていた。汽車に乗っている夢だ。
木造で出来た車内と体が沈むような柔らかい深緑色の椅子。車内はとても静かだがだいぶ混んでいて、自分の
座っている二人掛けの椅子や向かい合わせになっている席も知らない人が座っている。窓から外を覗くと木々の
間から爛々と輝く遊園地のような建物が見える。夜だというのにそこだけが昼間のように明るい。
「あれってなんですか?」
少女は窓際に座っていた唯一起きている向かいの老人に尋ねた。老人は窓から外を覗き、首をかしげる。
「なんでしょうなぁ」
白いあごひげを撫でながら笑う。そこで少女は目を覚ました。

友人にそれを話すと
「銀河鉄道なんじゃない?」
と適当に流されてしまった。友人に言われて少女はあの汽車がどこに向かっているのかを知らない事に気付いた。
しかし何にしろ同じ夢を見る事はないだろうし、深く考えなくていいかと思い、少女はそれ以降汽車の夢について
考える事は無かった。
しかしその日の夜。少女は同じ汽車の夢を見た。
前と同じように椅子に座っている。向かいにいる人も前回と同じだ。窓の外も前回と変わりない。老人にこの汽車の
行き先を聞こうとしたら、車両を繋ぐドアが開いた。車掌の格好をした若い男性が入ってきて、車両を見渡す。
「これから切符の確認をします。乗客のかたは切符を出して下さい」
男性は明朗な声でそう宣言し、一番手前からチェックを始めた。
少女は慌てて、ポケットを調べるが切符どころか何一つ持っていない。身の回りにも手荷物もなくこのままでは
無賃乗車で捕まってしまう。どうしようと悩んでいるうちに少女は目を覚ました。

この事を同じ友人に話すと怪訝な顔をして
「同じ夢を見たの? 連続で? 電車で旅でもしたいとか思ってるんじゃないの?」
と言われた。夢というのは未だに解明されてないことが多くあるようだが、寝る前にある物事を強く想像していると
その夢を見るという話は聞いた事がある。意識的にはそう思ってなくても私の心の根底では電車やあんな汽車で
どこかへ旅をしたいと思っているのかもしれない。そんな理由で自分を適当に納得させた。
夢の中で目を覚ますと、昨日の続きだった。
車掌は少女の席の前の廊下に既にいて、向かいの老人が何か紙を渡していた。それを車掌がペンチのような道具
でパチンと挟み、老人に返す。次に車掌が少女に手を差し出す。
「すみません。切符持ってないんです」
ごめんなさい、と立ち上がって頭を下げる。しかし返って来た反応は意外なものだった。
「そうですか。ではごゆっくり」
そのまま車掌は隣の席に移る。少女はそれを腰を曲げたまま呆然と見送った。
「起きているからお若いのに切符を持っているのかと思ったのじゃが違ったようじゃの」
老人が朗らかに笑いながら自分の髭を撫でる。そういえば少女の隣にいる人もその向かいの人。いや、立ち上がっ
て車内を見渡すとみんな椅子に座ったまま寝ている。だから静かなのだ。今いち状況が飲み込めずにいると老人が
座るように促すので、着席する。
「この汽車の乗客は普段寝ているんじゃ。そして目を覚ましたとき、この汽車から降りる。切符と
 はこの汽車から降りる券、降車券とでも呼ぶ代物のことじゃな」
そう言って老人が少女に降車券を見せる。古い紙には『1930-』と書かれており、その横に穴が空いているだけで他には
何も書かれていない。老人にそれを返すと彼女は夢から目を覚ました。


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