過去ログ - P「律子の淹れるコーヒーはすげー苦い」
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6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 09:50:24.83 ID:7b2UHG2Go
 それから一年間、765プロは出来過ぎたくらいに仕事を増やしていった。
 律子の淹れるコーヒーがすげー苦くなったのも、この一年の間だ。

 忙しくなって、俺が日中眠そうにしているのを見かねて、
濃いコーヒーを淹れるようになったのかもしれない。
以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 09:51:41.12 ID:7b2UHG2Go
「なんだよ。あんまり苦いから、こうしないと胃に穴が空いちまうんだよ」

 憎まれ口を叩いてやると、律子はふんと鼻を鳴らしてパソコンの画面に目を戻す。
 こういうピリピリしたやりとりも、最近の習慣だ。思わず溜息が出る。

以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 09:52:34.88 ID:7b2UHG2Go
「溜息をつくと、幸せが逃げますよ」

「うるせーな。ほっとけ」

 俺たちのやりとりを見て、小鳥さんがハラハラとしているのもいつものこと。
以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 09:53:32.22 ID:7b2UHG2Go
 事務仕事が長引いて残業になっても、律子と一緒なら疲れなかった。
 前は、前は……。

 また溜息をついてしまう。
 今は楽しくなかった。律子といると疲れる。コーヒーは美味しくない。
以下略



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 09:55:15.42 ID:7b2UHG2Go
 一人になりたかった。俺は断りなくデスクを立って、事務所を出た。
階段を上って、屋上に続くドアを開けると湿った空気とコンクリートの匂い。

 後ろ手にドアを閉める。霧雨がしとしとと髪や肩に落ちてきた。
 泣きたくなった。泣けば、涙は霧雨に溶けてこの星に落ちて行くような気がした。
以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 09:55:50.61 ID:7b2UHG2Go
「幸せが逃げるぞ」

 律子はまた溜息をついた。もう、逃げる幸せも持ち合わせていないように。

「傘、差しても意味ないって。霧雨なんだし」
以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 09:56:44.66 ID:7b2UHG2Go
「いい機会なので、話そうと思うんですけど」

 霧雨が積もる屋上で二人きり。本当にいい機会なのか、疑問だ。

「ここ、辞めようと思うんです」
以下略



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 09:57:30.73 ID:7b2UHG2Go
 嫌味も思いつかなかった。無言で踵を返して、屋上から逃げた。

 律子は俺よりずっと優秀だ。頭の回転は速いし、俺の苦手な細かい仕事もそつなくこなす。
人を見る目だってある。いつだって冷静だけど情熱を欠かさない。

以下略



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 09:58:26.15 ID:7b2UHG2Go
 俺が自分のデスクに戻って、ぬるくなり始めたコーヒーを飲み干した頃に、律子は帰ってきた。
スーツは濡れて色を濃くしていた。律子の前髪から頬へと水滴がぴたりと落ちた。
傘を畳んだままでしばらく屋上にいたらしいことが分かった。

 小鳥さんが慌ててタオルを持ってきて、律子に渡した。
以下略



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:00:23.42 ID:7b2UHG2Go
 ―――

 二、三日続いた霧雨が重さを増して、ばしゃばしゃと地面に跳ね返るようになった。
事務所の窓には水滴が伝って、冷たい宝石のように溶けて落ちた。

以下略



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/23(月) 10:01:15.25 ID:7b2UHG2Go
「なんです? じろじろと」

「……見てないよ」

「見てたじゃないですか、じろじろと」
以下略



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