過去ログ - エリカ「あなたが勝つって、信じていますから」
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263:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/05(火) 00:17:55.93 ID:A2if7Xi90
 カツラはグレン島にポケモン研究所ができる前から、この島に住んでいた。それは当時とても珍しく彼を変人扱いするものもいたが、カツラの生来の明るさとポケモントレーナーとしての造詣の深さが、この島にやってきた研究員たちとカツラの関係を深くした。

 その中でも特に気が合ったのが、親友フジ。フジはグレン島にやってきた研究員の中でも特に優れた科学者で、彼が特に得意としていたの遺伝子工学の分野。ポケモンの出生、進化の秘密を題目とした研究においては随一の科学者だった。

 フジの活気あふれる研究意欲に、カツラも協力した。純粋な欲求だった。ポケモンのことをもっと知りたい。ポケモンはなぜ生まれたのか、どこから来たのか、そしてどこへ行くのか。彼らにとって生活のパートナーを理解するための、あくまでポジティブな感情に満ちた探求だった。

 そしてカツラとフジの二人は、南アメリカのギアナへポケモン研究の遠征に赴いた際に、世紀の発見に成功する。

 普通のポケモンとは明らかに違う、はっきりとした形の手足と尻尾、そして流線型のフォルム。薄い桃色の光沢ある肌。羽を持たずに滑るように空を自在に飛ぶポケモン。

 紆余曲折の末そのポケモンの捕獲に成功した二人は、研究所でその生体を調べ、このポケモンが非情に特異な遺伝子の特徴を持つポケモンだということを解明した。

 まるで全てのポケモンのコピー、まるで祖先。発見されていたあらゆるポケモンの遺伝子配列データを持つこのポケモンを、フジは自然界では到底ありえない個体として突然変異体(ミュータント)、ミュウと名づけた。

 カツラを含めたあらゆるグレン島の研究者がこのポケモンに熱中した。あらゆる技を覚え、しかも高水準でこなすことができる。火を吐き氷を作り植物を生み出すポケモンなど、夢を見ているようだった。

 時が経つとある日、ミュウは子供を生んでいた。元々妊娠していたのかどころか、オスかメスかもわからなかった研究員達にとっては、意図せず大量の黄金を掘り当てた炭鉱夫よりも幸福だったに違いない。

 ミュウの子。名付けられた名はミュウツー。

 しかし、過ぎた幸運は諸刃であることを、彼らは身を持って思い知ることになる。

 ある日ミュウの子の処遇を聞いたカツラは、フジに激昂した。

「あの子の遺伝子を操作する!? 正気かフジ!!」

「正気さカツラ。あのミュウの子だぞ。我々が今まで培ってきた遺伝子研究を活かす時が来たのだ! 俺たち皆の力を合わせれば、誰も見たことがない最高のポケモンを作り出すことができる!」

「馬鹿を言うな! ミュウツーは命あるポケモンだぞ!? その遺伝子を身勝手にわれらが操作するなど……!」

「カツラ。俺達は誓ったはずだ。ポケモンの全ての謎を解き明かす。この機会を逃してどうする!? ポケモンの出産、次代への継承! 遺伝子の変遷! その全ての謎の答えの扉がミュウツーだ! カツラとてわかっているはずだ。ミュウは二度、三度として捕まえられるようなポケモンではない。我ら研究者がこの機を逃してどうする!? それとも、今更生命への冒涜だとでも抜かすきか? お前だってポケモンに使う薬の臨床実験がいかにして行われているか、知らないはずがあるまい! それと違うとでも言う気か……!」

「……それは……!」

「とまるなカツラ。俺達はどこまでも進むんだ。ポケモンの謎を解き明かすために……!」

 カツラは己に沸き起こった道徳観念を胸の奥にしまい込み、無視した。

(……フジの、言うとおりかもしれない。我らの研究は、全てのポケモン研究者たちにとっての悲願だ。もしミュウの秘密が解き明かせれば、ポケモン研究は10年、いや100年進むと言っても過言ではない)


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