過去ログ - 先輩「そこから見えるのは、どんな景色ですか?」
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14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/16(水) 00:23:47.31 ID:8oJAdiKmo

 文芸部の部員数は七名だ。

 俺と大澤、「あかね」と「みさと」、それから部室に顔を出さない幽霊部員の男子二名。
 引退したひなた先輩は除外。最後のひとりは、唯一の一年生、女子部員だ。

 彼女は、いつ頃からだろう、部室にいる時間が短くなった。
 かわりに、屋上でひとりで過ごしている様子を、よく見かけるようになった。 
 何をするわけでもなく、ただぼんやりと街を見下ろしているだけ。

 良いというのでも、悪いというのでもないけれど。

「こんにちは、せんぱい」

 俺が屋上に出ると同時、彼女はこちらを振り向いて、「仕方なく」というふうに笑いながら言った。

「こんにちは」

 俺がオウム返しのように返事をすると、彼女は何も言わないまま、フェンスに向き直った。
 余計な世間話を好まないのはお互い様だが、彼女の沈黙は、それだけが理由というわけでもなさそうだった。

 風は思った通り冷たかった。思ったよりも強かった。

 少し迷ったが、俺は結局、彼女との距離を少し詰めて、声を掛けた。

「部室、顔出さないの?」

 彼女はこちらに背中を向けたまま肩越しに振り返り、困ったみたいに笑う。

「今日は、気分じゃなかったので」

「そう」

 それ以上は何も言わずに、俺は踵を返して屋上を立ち去ろうとした。




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