過去ログ - 阿良々木暦「まゆミミック」
1- 20
22: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/07/29(火) 20:47:54.26 ID:YJpQUpwa0

「本当にこんな事でいいんですか?」

「こんな事、とは何を指している」

話しながらも手は止めない。
肉は焦げても冷めても一気に味が落ちる。
雑談ごときで肉を貶める訳には行かない。

「いえ、本音を言いますともっと酷い事を要求されると思っていたので……」

ああ、口止めの話か。
くだらんな。

「目玉が飛び出る程の大金を要求したり、アイドルとして口には出せんような酷い事をして欲しかったのか」

「して欲しい訳ではありませんけど、貝木さんは詐欺師でプロデューサーさんも気を付けろ、と言っていたので」

「女を騙して金を巻き上げるのは良くやるが、女を脅してものにするなど主義に反する。それとも何か、今回、俺が得るべきだった報酬を肩代わりしてくれるのか? 三千万だぞ三千万」

今回、俺は三千万円を取り損ねたのだ。
あの後、臥煙先輩に連絡を取ったところ、虚節が持ち帰れなかったのならば、と出たのは交通費込みで五万。
必要経費と阿良々木にくれてやった金でほぼ消えてしまっている為、実際はただ働きに近い。
だからこうしてせめてもの想いで佐久間に肉を奢らせている訳だが、とはいえ三千万円分の肉を食うのは骨どころか肉が嫌いになりそうなのでやらないでおこう。
それにどうせ売れっ子現役アイドルなんて俺より金を持っているだろう。

「流石に三千万円は無理ですが……お優しいんですね、貝木さんは」

思わず箸が止まる。
何を言っているんだこいつは。
俺が優しい?

「ああそうさ、俺は優しいおじさんなんだ。そういう奴は俺みたいに大概何か企んでいるろくでもない奴だから気を付けろよ」

「まゆ、悪い人とそうでない人を見抜くのは得意なんですよ? プロデューサーさんも助けてくれたみたいですし……」

俺が阿良々木を助けたって?

馬鹿を言え、誰が金さえ絡まなきゃあんな女たらしを助けるかよ。

「そうなんだよ、かつての好敵手とは言え見過ごせなくてなあ。つい助けちまったんだよ」

「ふふ……貝木さん、かわいい」

「…………」

肉が焦げてしまった。
畜生、折角の高い肉が。

炭化した肉を口に押し込む。
焼けば焼くほど美味くなる臓物系ならばまだしも、炭化したカルビは最早残飯に等しかった。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
33Res/44.53 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice