6: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/07/29(火) 19:54:14.96 ID:YJpQUpwa0
002
「久し振りだねえ。元気だったかい?」
凡そ数年振りに再会に至った大学の同期は、数年経っても変わらぬ不愉快な笑いを貼り付けて突然現れた。
場所は地方にある大型スーパーの敷地内にあるスターバックスだ。
俺はこの店が割と好きだ。
理由を問われるのであれば、味よりも雰囲気が好ましいから、と答えよう。
俺にここで売っている600円のラテとコンビニで売っている100円ラテの違いなど正直良く分からん。
目隠しをしてどちらが美味いか、と言われて高い方を選べる自信ははっきり言って、ない。
そりゃあコンビニのものよりは多少美味い、とは思うものの、六倍美味いのかと問われたら断言出来る材料もない。
だが前者の方が美味く感じるのは金が掛かっているからだろう。
そりゃあ素材や手間などを掛けているから、という理由もある。
だが食い物だけに関わらず、手間暇を掛けたり素材が貴重だからといってその分、質が良くなるとは限らないのが世の常だ。
何億という金と何年という歳月をかけて作り上げたものがゴミだなんてこと、人間の世界では日常茶飯事だ。
そんなことに使うくらいならば俺にくれと言いたい。
逆もまた然りと言えよう。
つまり、内容がゴミだろうが本当にいいものだろうが、どちらにせよそれなりの気分にさせてくれる金の力は偉大とでも言うべきだ。
単に俺を含めた客が単純馬鹿なのかは測りかねるが、大して間違ったことは言っていまい。
「気分が悪い。お前の所為でな」
「久々に会った友人に酷いことを言うねえ」
かつての大学の同期、忍野メメは許しもしていないのに勝手に対面に座る。
こいつの傍若無人っぷりには俺の悪事も霞む位だ。
「僕はここの豆乳が好きでね」
いいよね、豆乳、と冗談なのか本音なのか量りにくい事を抜かす忍野。
俺は豆乳が嫌いだ。
別に味が嫌いな訳ではないのだが、如何にも健康になりますよ、という味と謳い文句は癇に障る。
「何の用だ」
偶然に数年振りの感動の再会――なんて陳腐な展開に楽観する程、俺も若くはないし馬鹿でもない。
適当に生きているように見えて無駄を嫌う忍野のことだ。
忍野が俺の前に現れたという事は、十中八九何かしら話があるのだ。
それも、恐らくは面倒事が。
付け加えるのならば、忍野にスタバは全くもって似合わん。
こいつは外国のスラム街でヒッピーよろしくギターでも弾いて世界平和を歌っている方が百倍似合う。
俺も似合うかと言われれば疑問符がつくところなので強くは言えんが。
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