47:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 20:23:06.66 ID:SluoaBc3o
「最初は興味本位だったんですよ」
鉄さんに話しかけたのは、と彼女は言った。
彼はゆっくり頷いた。
それはとっくに分かっていた。
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2014/08/02(土) 20:27:30.05 ID:SluoaBc3o
「でも、なんだか小さな子供みたいにも見えたんですよ。
一人で本を読んでいる鉄さんの姿が、
遊びに誘われるのを期待しているような、
母親の帰りを待っているような子供みたいに。
だからその次は同情だったんだと思います。
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2014/08/02(土) 20:31:35.23 ID:SluoaBc3o
怒りましたか、と不安そうなその問いに対して、
彼は緩やかに首を振って、「どうでもいいさ」と答えた。
突き放したようにも聞こえるその言葉に、
しかし彼女は「ありがとうございます」と言った。
50:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 20:35:30.46 ID:SluoaBc3o
「このあとはサークルの皆で打ち上げです。
卒業記念です。
皆、就職やら進学やらでバラバラになりますからね。
私も遠くに就職ですし」
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2014/08/02(土) 20:38:52.81 ID:SluoaBc3o
「なにも言うことはないんですか」
彼女は彼のほうに顔を向けて、尋ねた。
今度は笑ってはいなかった。
彼はその視線から逃げるように、
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2014/08/02(土) 20:42:18.88 ID:SluoaBc3o
求めている答えが、さっきとは違う類の物であることには勘付いていた。
それでも、彼はやっぱり何も言わなかった。
重苦しい沈黙だけが二人の間に横たわり、そして時間が過ぎていった。
風が木々を揺らす音と、どこか遠くから聞こえてくる
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2014/08/02(土) 20:45:48.24 ID:dYBmZVR4o
うおおおおおおしええええん
54:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 20:46:02.79 ID:SluoaBc3o
「そろそろ時間なので、行きますね」
彼女は立ち上がって、彼の真ん前にきた。
そして、彼の顔をまっすぐ見据えた。
55:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 20:49:30.28 ID:SluoaBc3o
先ほどよりも遙かに強く、卒業証書の筒が振り下ろされた。
「バーカ!!」
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2014/08/02(土) 20:53:13.61 ID:SluoaBc3o
頭を揺らす衝撃が身体全体に広がっていくのを感じつつ、
今から追いかけても簡単に追いつくな、なんてことを彼は考えた。
それでも彼は立ち上がることなく、
彼女が歩き去った方向を、ただぼんやりと眺めていた。
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2014/08/02(土) 20:54:19.94 ID:dYBmZVR4o
鉄が泣いてベンチで座ったまま錆になるのか
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