過去ログ - 昼下がりの女子中学生 百合ver
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117:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/08/10(日) 16:37:37.33 ID:hOlQShf80
「私、男の子だったら良かった」

両腕を服の上から胸に這わせる。
羽毛を詰め込んだようだ。彼女の身体はとても柔らかい。

「そしたら、もっと伊藤さんのこと気持ち良くさせられたのに」

「い、いいよ、ちーちゃんは女の子で……ッ」

「ううん、他にも、堂々と好きだって言えるし、もっと格好悪くても、伊藤さんの傍にいたいって幸せにしたいって言ってた。でも、女で中途半端な私にはさ、中途半端な愛し方しかできないわ……」

可愛い可愛いと愛でることなんて、誰にでもできる。
誰にでもできることを、私はしたくなんかないのに。

「……私は、たぶんちーちゃん以外の人にこんなことされたら嫌……だよ」

「伊藤さん……嫌じゃないの」

「ちょっと、びっくりしたけど……私も甘えたかったから、それ黙ってたしお相子」

額に張り付いた髪をかき分けて、彼女のおでこにキスをした。

「伊藤さん……伊藤さん……」

「ちーちゃん、名前で呼んでくれていいんだよ」

「……」

いいの? 
怖くない?
大切な人を思い出さない?
大丈夫?

「かや……ちゃん」

「ありがとう……」

あの、葬式の日以来、私は初めて彼女の名前を呼んだ。
何がかやを傷つけるのか分からなくて、怖かったと言えばそうだ。
彼女から見た世界が分からないのに、何を彼女にあげられるんだろうと思った。
ちっぽけな頭で、ぐるぐると考えていた。
何かを与えて傷つけるなら、与えないことで守った方がいいんじゃないかと思った。

知って、何もしないのなら、初めから聞かない方がいい。
知ったなら、何かしてあげたい。結局、知らないと何もできない。


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