過去ログ - 昼下がりの女子中学生 百合ver
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52:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/08/08(金) 15:35:37.48 ID:hxj0TQd00
戻ってきた伊藤さんから私の髪の長さと同じくらいのウイッグを受け取った。
夏にこんなもの被ったら蒸れるじゃん、と思ったが口には出さなかった。

「これならばれないよ」

ばれなきゃいい、という発想はなんだか伊藤さんらしからぬものだった。
もしかしたら、それだけ私を普通に学校へ行かせたいのかもしれない。

「サンキュー……じゃあね」

「うん。お勉強は、週末に回すね」

「げ」

私は肩をがくりと落とす。

「ワンッ」

けんちゃんがいつの間にか玄関まで出てきて、私を励ますように吠えた。

「……わん」

ツケは後で回ってくるだけなんだと理解した。
玄関の明かりを背に笑顔で手を振る伊藤さん。私も小さく振り返す。
私の家は、そこから30秒で着いてしまう。その30秒、伊藤さんはずっと私に手を振るのだ。
けんちゃんもその隣で座っている。

彼女は知ってる。
その30秒の孤独を。
誰もいない家の暗さを。

だったら、家に来てよ。
なんて、その言葉は一度だって言えた試しがない。





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