12: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/08/07(木) 22:55:54.52 ID:iJvGxYcs0
偶然、そこにあった阿良々木くんの足を踏んづけてしまった。
偶然にも全体重が掛かってしまったし……あら、痛そう。
偶然とは言え悪いことをしちゃったわね。
おほほ、と笑いながら足を退けてあげる。
「わざとだ……絶対わざとだ」
ぶつぶつと文句を言う阿良々木くんを後目に公園を出る。
入口に立っている看板には『浪白公園』と書かれていた。
この公園の名前だろう。
『なみしろ』と読むのか『ろうはく』と読むのか、ルビが振っていないのでわからないが、個人的には響き的に『なみしろ』の気がする。
「遊ぶならこんな所で一人ふらふらしていないで友達と遊びなさいよ」
「友達は作らない。人間強度が下がる」
「……なに言ってんの君」
大丈夫かしら。
これは思春期にありがちな孤独を好む傾向で済まされるレベルなのかしら。
……まぁ、私が口を挟むことでもないけれど。
「阿良々木君もいい歳なんだから、彼女くらい作ったらどうなの」
「彼女も作らない。人間強度が」
「はぁ……わかった、わかったわよ」
あと一年もすれば、きっと今言ってることの恥ずかしさに気付いて黒歴史になるでしょ。
その時にまたからかってやろう。
「川島さんこそ行き遅れないうちに彼氏作ったらどうなんだ?」
「私の理想は高いのよ」
「ちなみにどれくらい?」
「んー……かっこよくて、私を大事にしてくれて、おばあちゃんになっても好きって言ってくれるような人」
「いねえよそんな完璧超人」
いいじゃない、女の子なんだから結婚に夢くらい見ても。
でも一生のことだし、妥協はしたくないしね。
「売れ残っても知らないぞ」
「いいのよ、その時は阿良々木君 が養ってくれるんでしょ?」
「なにその損な役回り!?」
「なによ、昔『僕、瑞樹姉ちゃんと結婚する』って言ってくれたじゃない」
「ぐ…………っ!」
子供の頃の約束だなんて時効もいいところだけれど、これくらいは役得よね。ああ、面白い。
「ところで、どうして阿良々木くんは私のことを昔みたいに呼んでくれないのかなぁ?」
「……高校生にもなって瑞樹姉ちゃんなんて呼べるかよ、恥ずかしい」
「あの頃の阿良々木君は可愛げもあったのになぁ」
こういうところはまだまだ子供だなあ。
今でもたまに、気を抜くと瑞樹姉ちゃんって呼んでくれるのに。
「僕は今でも可愛いだろ」
「五年遅いのよ」
きゅるきゅると音がする。
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