過去ログ - 叢雲「落ち着きが無いわね。大丈夫?」グラハム「私は我慢弱い」
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282: ◆WHzNz9zb1A[sage saga]
2015/11/09(月) 01:33:00.68 ID:hKXGv7fZo

 突拍子も無いことに素っ頓狂な声を上げ、それをお互い口を手で抑えあって……こんなことを厠で繰り広げている私たちは、実に滑稽に見えることだろう。
 だが、本当に突然のことだった。
 彼が、グラハムが脱走艦の侵入経路はおろか、現在地を特定したと言ってきたのは。

叢雲「……どうやって突き止めたのよ、さっきまで頭抱えてたのはあんたと大佐でしょ?」

グラハム「確定はしていないが確信はある、というべきかな。とにかく時間がない、一緒に来てほしい」

叢雲「それは構わないけど……他の三人には話したの?」

グラハム「まだだ」

叢雲「ならすぐに言わなきゃ! 私が行くわ、ちょっと待ってて……」

グラハム「駄目だ、不都合が出る」

叢雲「え?」


 表情は硬かったが、焦りや迷いは全く見えない。
 ただただまっすぐに見つめてくる彼の静かな視線に、何となく目をそらす。
 というか、近い。大変に、近かった。主に顔が。


グラハム「説明は移動しながらで構わんな。いくぞ」

叢雲「あっ、ちょっ……もう!」


 沈黙を肯定ととらえたか、我慢が限度を超えたのか。
 彼はそのまま手を引き、競歩でどんどんと歩き出す。
 歩幅の違いからちょっと小走りに追いかけるけれど、途中で歩きづらくて、手を振りほどく。
 そして、そのまま隣に並んで、高い位置の頭を見上げれば、それを合図に、険しい顔が口を開いた。
 向かう先は工廠横の入渠ドック。
 グラハムが彼女に遭遇した現場だ。


グラハム「まずひとつ、偶然侵入できたという可能性は皆無だ」

グラハム「万が一それがあったとして、同じ賭けを脱出時にもやらなくてはならない。ここは侵入困難な要塞以前に、脱出不可能な私の檻でもあるのだからな」

叢雲「じゃあ、出入り可能な侵入経路は確保されている……と考えていいわけね」

グラハム「そしてふたつ目、今回の案件は偶発的な事故に近いものだ」

叢雲「……?」

グラハム「考えてみろ叢雲、脱走犯がどこかへ計画的に侵入するとして、だ」

グラハム「目的を有するならまず侵入しやすい場所を狙うはずだ。なぜわざわざケンペイが蔓延るこんな廃墟に来る?」

叢雲「う……確かに、あいつら正面門に堂々と立ってるものね……」

グラハム「天敵に喧嘩を挑む馬鹿なら、恐らく私は無事ではなかったろうしな」

グラハム「そして彼女が入渠用浄化水に浸かっていたということは、すなわち負傷しているということ」

グラハム「そして更にッ!」

叢雲「!」
 




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