48:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/09/03(水) 15:57:44.12 ID:ZhA2i8PA0
車に乗り込んだ途端、携帯に電話がかかってきた。
母だった。
「先生、母から電話がかかってきたので出て構いませんか」
「いいですが……」
柏木先生は前を向いたまま、目を細める。そして、アクセルを踏んだ。
母にはまだ私が早退すること伝えていない。
この時間は、私が学校へ行っているのを知っている。
では、なぜわざわざこの時間に電話してきたのか。
先生が言いたいのは大方そんなところだろう。
「もしもし」
『卓郎さん』
「……」
私は車の電子時計を素早く確認する。
まだ15時だ。早すぎる。
『卓郎さん?』
「……」
私の携帯は父の持っていたものだった。
だから、記憶のない時の母が父へ電話をかける時はいつもこの番号へかける。
番号を変えていないのは、母がその向こうにいるはずの人物がいないと知った時、どんな状態になるかがわからないからだ。
『ねえ、どうした』
そして、私は母を悲しませることが何よりも、何よりも辛い。
「……すまない、どうしたんだ?」
声のトーンを落とす。話し方を変える。
電話越しだと、それだけで人は錯覚できる。
本人だと。
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