71:オータ ◆aTPuZgTcsQ[saga]
2014/08/26(火) 00:53:32.48 ID:57lCD6A/O
「けれど、親父はアンタから逃げるように里を離れたから、周囲からは犯人扱いされたんだ。
お袋はそれに耐えきれず、体を悪くして死んだとリンは言った」
ネイチはどんどん早口になっていった。
「俺はそれを、霧に向かう道中で聞いていた。
リンがどんな酷い目に逢おうと、俺は死にたくかったからな。
でも、俺はまた驚いたよ。
リンから聞く話はあまりにも悲惨なものだった。
リンは義理の両親から虐待を受けていた」
俺はリンの暗い目を思い出した。
気づかなかった事が悔やまれる。
だが、時折見せた暗い表情に気が付いたのは、大人になってからだった。
「それだけじゃない。
最近仲間が死んだのだと話してくれた。
しかも、好きな相手があの白い牙の息子なのだと俺に言った。
本当に辛いときに、俺に会えて良かったと、リンは笑った」
「リン……」
「リンの変わらない天使みたいな笑顔を見て、俺は気づいてしまった。
ずっと恨んでいた相手は、最愛の妹だったのだと。
俺はリンを守らなくてはと思った」
「……急な心変わりだな」
「そりゃ理解できないだろうか。
だが、そう思わせるぐらいリンの笑顔は懐かしく、本当に天使みたいだった。
しかし、もう遅かったよ。
リンは霧に連れ去られた。
俺の名を叫びながら……」
俺にもリンの泣き叫ぶ声が聞こえてきそうだった。
俺は目をつむった。
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