過去ログ - 苗木こまる「雨はハレ」
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47: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 22:30:52.01 ID:UDVM4aPw0

 身体を起こし、部屋を見回す。
 ジェノサイダーが居なかった。
 干してあったセーラー服もない。
 ベッドの上には意外にも綺麗に畳まれた、わたしがジェノサイダーに貸したパジャマがあった。その上にメモが一枚置いてある。わたしが部屋に置いているメモ帳の一片だ。「寝相悪過ぎ」と、乱雑な字で小言だけが書かれていた。丸めて捨ててやろうかと思ったが、裏面にも何か書かれていることに気づいた。「雨は止んでない。せいぜいお気をつけて」と書かれていた。
以下略



48: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 22:34:37.58 ID:UDVM4aPw0

----- ✂︎ -----


 ジェノサイダーとの邂逅から、三日が経った。
以下略



49: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 22:37:17.62 ID:UDVM4aPw0

「落ち着いてるよ」内心ぎくりとしながら、わたしは空とぼけた。「全然、普通だけど」

「評価ってのは、他人がするものだよ」友人は冷たく言い放った。「こまる、そわそわしてるでしょ。特別な日を前にしてるみたいな」

以下略



50: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 22:38:33.53 ID:UDVM4aPw0

「ハレの日は、皆が狂騒に身を任せる時間。その時だけ許される狂気をケの日に持ち込む者はタブレビト……狂人」

「タブレビト……」

以下略



51: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 22:39:40.21 ID:UDVM4aPw0

----- ✂︎ -----


 あれだけのことがあっても、わたしは警察に駆け込むという行動をとっていなかった。
以下略



52: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 22:40:59.85 ID:UDVM4aPw0

 しかし、問題がある。
 これまで、通り魔的に人を襲ってきた雨男だが、次の標的として、唯一の目撃者であるわたしが狙われる可能性がある、ということだ。
 わたしが警察に情報提供をしなくても、僅かな縁を刈り取りに来るかもしれない。
 沈黙を守ると決めた以上、誰を頼ることもできない。
以下略



53: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 22:42:27.76 ID:UDVM4aPw0

 エスカレーターに乗り階を上がっていく。
 やがて、文具コーナーがある階に、吸い寄せられるように降りた。
 持ってても不自然でなくて、武器になる物はないだろうか。
 いつの間にか、手に取っていたのは、鋏だった。
以下略



54: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 22:43:30.56 ID:UDVM4aPw0

 ジェノサイダーと雨男の対決はごく短い時間だったが、どちらも常軌を逸した動きをしていた。
 わたしなんかが、何か中途半端な武器を取ったところで、どうにかなるのか。
 一体何をしているんだろう、わたしは。
 雨が降るまでに、何かもっとまともな策を用意しなくては、まずい。
以下略



55: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 22:44:34.09 ID:UDVM4aPw0

 ぶつかった、そう思った瞬間、わたしの目前に床があった。
 何が何だか解らなかったが、とにかくわたしは転んで、這いつくばっていた。
 右脛が異様に痛む。簡単に立てそうにない。
 うつ伏せに倒れていたわたしは、なんとか上体だけ起こし、後ろを振り返った。
以下略



56: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 22:46:12.17 ID:UDVM4aPw0

 嘘だ、あり得ない。屋内に現れるなんて。大体、今日は雨じゃないのに。
 叫びが喉まで出かかったその時、先んじて無数の叫び声が聞こえ、辺りを見回す。何が起きている?そして、フロアが明るくなったことに気づく。元々暗かったわけではない。不自然に、一層明るくなっていた。
 雨男の背後で、幾つもの商品棚が、煌々と燃え上がっていた。



57: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 22:47:14.18 ID:UDVM4aPw0

 ミネラルウォーターのラベルが付いた、空の2リットルペットボトルが何本か床に転がっている。あれに灯油を入れて持ち込んだのか。
 火の手は見る見るうちに、フロア中に広がっていく。
 けたたましく、非常ベルが鳴り響き、スプリンクラーが散水をしている。スピーカーや非常口の誘導灯からアナウンスが流れるが、頭に入ってこない。誰もが非常口に殺到し、逃げて行く。待って、と叫ぶが、喧騒の中、誰も気づかない。
 置いてけぼりだ。
以下略



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