過去ログ - 苗木こまる「雨はハレ」
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65: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 22:59:33.72 ID:UDVM4aPw0

「余計なもんが裁断できたおかげで、さっぱりしたわ。まるで生まれ変わったみたいにさあ、世界がすっきりはっきりしてますわ。後はあれを切り刻むだけってわけよ」鋏が雨男を指した。

 スプリンクラーの雨の下、殺人者が相対する。



66: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 23:00:15.68 ID:UDVM4aPw0

「アンタ、人を殺さないアタシがいてもいいって言ったわよね?」わたしに背を向け雨男と向き合ったまま、ジェノサイダーが尋ねてきた。「人を殺さないジェノサイダー翔がいても、って。覚えてんでしょうね?」

「は、はい」

以下略



67: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 23:01:20.22 ID:UDVM4aPw0

 唐突に、対決の火蓋が落ちる。
 一瞬で間合いを詰めたジェノサイダーが、真っ直ぐに右手の鋏を突き出した。雨男はその軌道から身を逸らし、そこ目掛けてナイフを振った。完璧な迎撃に思われた。
 しかし、ジェノサイダーの手は右半身ごと引っ込み、代わりに左手がボディブローの如く雨男の腹へ打ち込まれた。



68: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 23:02:34.64 ID:UDVM4aPw0

 雨男が後ろへ飛びすさった。左手で腹を抑え、小刻みに震えている。それ程までに強烈な一打だったのか、と思った時、ジェノサイダーを見て気づく。
 ジェノサイダーは両手に鋏を持っていた。しかも、左手の鋏は血に濡れている。
 殴ったのではなく、刺していたのだ。
 どうにかナイフを構える雨男の様子を鼻で笑い、ジェノサイダーは左の鋏に付いた血を、長い舌で舐めた。
以下略



69: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 23:03:29.74 ID:UDVM4aPw0

 突き出した雨男の腕が、血を噴いた。
 ジェノサイダーは完全に、雨男の刃を捉えていた。身を逸らし、迎撃する様には余裕すら感じられた。
 ジェノサイダーの右腕と、雨男の右腕がすれ違い、口を開けていたジェノサイダーの鋏が雨男の腕を裂いていた。



70: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 23:06:07.36 ID:UDVM4aPw0

 一切の間を置かず、左の鋏が雨男の脇腹に噛み付いた。雨男は低く呻き、後退する。
 更に右手の鋏が雨男の左肩を噛んだ。雨男が後退する。左の鋏が右肩を刺す。後退する。右の鋏が斬りつける。後退。左の鋏が裂く。後退。鋏が啄ばむ。鋏が抉る。
 ジェノサイダーは絶叫にも近い哄笑を上げた。口が裂けそうな程、腹が千切れそうな程、喉が壊れそうな程、笑いながら、雨男を刻む。

以下略



71: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 23:07:27.06 ID:UDVM4aPw0
 だらりと下がっていた雨男の右手が、矢で射抜かれたように、白塗りの壁に張り付いた。ジェノサイダーが鋏を突き立て、壁に縫い付けたのだ。ジェノサイダーは、自らの太腿に巻かれたホルダーから次々に新しい鋏を引き抜きながら、雨男の右二の腕、左二の腕、左手も同様に、串刺しに固定していく。内側のコンクリートが遠いのか、雨男の肉を通ってあっさりと、鋏が壁に突き立てられていく。
 雨男が身体中に無数の鋏を生やし、磔が完成した。まるで新たなジェノサイダーへの供物のようだった。
 信じられないことに、血達磨にされた上で磔にされてもなお、雨男は息をしていた。しかし、その命も最早、時間に奪われるか、ジェノサイダーに奪われるかのどちらかの未来しかない。



72: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 23:08:21.77 ID:UDVM4aPw0

「最後だし、きちんとお顔を拝見しよっか」ジェノサイダーが、雨男のフードに手をかけた。

「あら、なかなか素敵じゃないのよ。まあ、ちらちら見えてたから解ってたけどね」

以下略



73: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 23:09:07.01 ID:UDVM4aPw0

「僕は、雨の日を、ハレの日にしたかっただけだよ」目だけでわたしの方を見て、小さな、掠れた声で、友人は笑った。

 鋏が、彼の首を貫いた。



74: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/09/01(月) 23:09:53.35 ID:UDVM4aPw0

 一瞬の出来事が、永遠に感じた。
 喉仏の下に、閉じた刃の先が突き刺さる。気管、咽頭を貫き、頚椎を砕く。そのイメージが順番に、わたしの頭に展開されていく。
 ジェノサイダーは、彼の首に深々と埋まった鋏を、鍵を開けるように捻じり、引き抜いた。首に開いた穴から、一気に鮮血が噴き出す。口からも、ごぽごぽと血の泡が漏れ出した。
 がくり、と彼の頭が垂れた。糸の切れた人形のように全身からも力が消え去るが、突き刺さった鋏が倒れることを許さなかった。
以下略



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