過去ログ - 小説家『……』
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3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/09/12(金) 09:25:26.60 ID:YEnzxIxj0
男は持っていたバッグをあさり、通帳を取り出した。
『そこにゃ俺の資産が載ってる。一部だけどな……職業は勘弁してくれ。表に出せるようなもんじゃないんだ』
スーツの男は渡されたそれを空いてる方の手で受け取り、ざっと目を通してまあいいだろうと胸ポケットから手を出した。
『随分と持ってるじゃないか。日本人のサラリーマンはこんなに儲かるもんなのかい?』
『サラリーマンなんかじゃ一生手は届かないだろうよ』
男がなんの気なしにに返すのを聞いたスーツの男は皮肉げに唇を歪め、両開きのドアを押し開ける。
中には格子がかかっている猛獣用の箱が縦横無尽に並べられており、箱の中からは啜り泣きや何かを齧っているような音が鳴り響いてくる。
『商品にしちゃ扱いが粗雑じゃないのか?』
『それなりのモンにはそれなりの扱いをしてるさ。あんたが買うのにはここで一番良いものを食わせてる。一週間に一回ぐらいだがな』
ふう、と男は内心で嘆息する。
商品管理ぐらいしっかりとやって欲しいもんだ。それにしても一週間に一回の食事じゃ相当痩せているな……。
まあいいさ、元々連れ帰るつもりだ。
滞在を1日伸ばし、少しものを食わせてやろう。俺の作品の糧になる大事な素材だからな。
やがて、積まれた箱の中のひとつの前でスーツの男は立ち止まる。
ポケットから出した鍵を差こみ回す、鉄箱の全面が開き、中身が衆目に晒される。
『へえ……』
『どうだ、上玉だろ……あんたんとこの国に行ったって違和感は無いだろうさ』
箱の中の少女は11歳程だろうか。小さな体を隅っこで丸め、ぴくりとも動かない。
雪のように真っ白な肌、肩ほど迄の艶やかな黒髪、そしてオッドアイ。
黒と灰色の瞳が男を二人の男をジッと見つめる。
『出自も中々いわく付きでな。旅行に来てたら紛争に巻き込まれて両親共に死亡。路頭に迷ってた所をウチの組織の下っ端が拾ったんだよ……大使館に連絡しようにも出自がわからねえからどうにもならねえ。そんなら売っちまおうと思ってな』
『その発想が羨ましいよ』
『あんたらみたいに上司の嫌味を聞いてりゃ給料が貰えるワケじゃないんでな……振込はスイス銀行だ』
『承った。ところで、この辺で過ごしやすい街はあるかい?ちょっと羽を伸ばしてから帰ろうと思うんだ』
『ウチの奴に送らせる。好きにやるといい』
街はにはたどり着けるようだ、選択の自由は無いようだけど。
まあまたご親切な事で。とスーツの男に返すと、男は無言で背を向け部屋から出ていく所で、答えは無かった。


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