99: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:24:55.52 ID:xRKE2vuiO
その翌日の出撃を最後に、赤城が鎮守府へと戻ることは、二度となかった。
100: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:25:30.81 ID:xRKE2vuiO
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
第五話「消せない傷」
101: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:26:24.17 ID:xRKE2vuiO
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「かくして我が艦隊は、新型『鬼』級空母こと空母棲鬼を撃破し、ミッドウェー島攻略に向け橋頭保を築いた、と」
102: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:27:24.11 ID:xRKE2vuiO
「ここまではいい」
提督が帽子のつばの右端をつまんだ。
103: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:28:27.65 ID:xRKE2vuiO
赤城は負けじとその眼差しを見つめ返した。
「少なくとも私にとっては、今訊かなければならないことです」
104: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:29:20.24 ID:xRKE2vuiO
しばし、刺すような静寂が執務室を覆った。
赤城は加賀の方を見る。
加賀は目を瞑って直立不動の姿勢を保っていた。
105: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:30:10.35 ID:xRKE2vuiO
「……なぜ『空母棲鬼』に狙われていたのが、自分だと思った? 聞けば交戦の直前、お前の様子がおかしかったとのことだが」
その問いには答えなかった。
106: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:31:23.21 ID:xRKE2vuiO
「だが、戯言の域を出んな」
「提督!」
107: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:32:47.17 ID:xRKE2vuiO
「百歩。百歩譲って、だ。かの空母棲鬼が、かつてどこかの海に沈んだ艦娘であったとして。過ぐる日我々の仲間であったのだと仮定して」
提督が細長く息を漏らす。
108: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:34:18.46 ID:xRKE2vuiO
返す言葉はなかった。
至極正論だった。
死者の正体を詮索することなど、こと戦争においてはなんの意味もない。
死者が決して戻ってこないことを、軍人ほど実感している者は他にいないからだ。
109: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/10/13(月) 23:35:16.83 ID:xRKE2vuiO
「あなたの思い出の海に、指輪を受け取った『赤城』は棲んでいますか?」
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