16: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/09/16(火) 20:18:42.38 ID:sCBd7Qvo0
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神は、人によって選ばれ、人ならざるものによって形を成す。
世界には、特にこの国においては、神は掃いて捨てるほどに存在する。
ひたぎが行き遭ったおもし蟹も神だし、述懐した通り八九寺も神になり、キスショットも千石もかつて神だった。
神原を苦しめたレイニー・デヴィルですら、時代と場所が違えば神になっていた可能性だってある。
極論を言ってしまえば鰯の頭も信心から、との言葉通り、僕ですら神になり得る可能性はある。
詰まる所、神はその程度のものであり、取り分け有り難がるものでもない、というのが忍の言だ。
とは言え、人間にとって特別な存在であるのも確かだ。
人外のものを認識出来ない普通の人間も、神という架空の存在がいなければここまで繁栄していなかっただろう。
正しく生きれば死後報われる。
神を信じて崇拝さえしていれば、次の人生は幸せなものになる。
その信仰は、過酷な時代を生きねばならなかった人達にとって、どれだけの救いになったことだろうか。
現代を生きる僕には到底理解出来ないし、理解しようとすることすら彼らにとって失礼だ。
かと言って、神を全肯定するのも僕には憚られる。
何しろ、ひたぎは母親を神によって失ったと言ってもいい。
ひたぎの場合は神そのものではなく、神という象徴を利用した悪徳宗教家によるものだが、ひたぎの身からしてみたらどちらでも同じようなものだろう。
神は、人を殺す毒にも、人を生かす薬にもなるのだ。
「ヒトが生きたまま神となる条件はみっつ。ひとつ、多数の人間に信仰されていること。ひとつ、相応しい逸話を持つこと。ひとつ、背景となる力の出処を持つこと。今回の場合は月じゃな」
多数の人間、というのは間違いなくファンのことだろう。
相応しい逸話は、神や英雄、伝説と呼ばれる存在には必要不可欠な要素だ。
その内容は凡そ人並ではない、常識を超えたものでなければならない。
その点において安部さんは歳を取らない、永遠の十七歳だ。
しかも人間ではない、ウサミン星人でもある。
逸話としては充分なのだろう。
そして、背景としての、月。
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