42: ◆297.OiRF9k[saga]
2014/09/25(木) 22:59:41.28 ID:Qub4rkDEo
「あなた様!」
貴音がソファーから立ち上がろうとするおれの腰に抱きついてきた。
右横方向から柔らかい弾力の作用が加えられたため、バランスを崩したおれの左足は
前に蹴り出される恰好になり、ソファー前に置かれた机の裏に勢いよくぶつかる。
その瞬間、机の端に置いてあった――貴音側のコーヒーカップが
ぐらりと床にむかって倒れるのをおれはスローモーションのように見た。
その白磁器の、牡丹彫りの、コーヒーカップが、床との衝突で割れることを予測したおれは
すぐに自分に取りすがる貴音の身体を逆に抱きすくめ、ソファーの上に覆い被さる。
背中のほうでコーヒーカップが粉々に割れる音がした。
「危なかったな。さあ片付けよう」
とおれは言おうとして、どきりとして口を噤んでしまった。
四条貴音の美貌がおれの顔近くにあったのだ。
貴音の吐く息が甘い香りのようにおれの鼻腔を刺激する。
「あなた様――」
となぜか貴音は挑むような表情でいった。
「それでは――まだ、悩みの解消に至りません。
わたくしはあなた様のお悩みを本当に取り除きたいのです」
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