過去ログ - 小蒔「霞ちゃんが帰ってきます!」 巴「えぇ、そうですね」
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2014/09/27(土) 02:49:24.80 ID:3lljHSEyo
「〜♪」
日曜の昼下がり。
霧島神境に姫様のアップテンポな、たどたどしい鼻歌が聞こえます。
こんなに姫様がご機嫌な理由は決まりきっています。
「巴ちゃんっ、巴ちゃんっ」
「はいはい。なんですか、姫様?」
ほら、きました。
「霞ちゃん、まだですかね?」
「えぇ。まだ1時を過ぎたばかりでしょう?」
笑顔で「そうですかぁ」とだけ言い、姫様はぱたぱたと走って行きました。
ふぅ、と一息。蛇口をきゅ、と捻ると、音を立てて水が流れ出します。
そのまま、私は先ほどのお昼ご飯の食器を洗い始めました。
冷たい水が、私の手から体温を奪っていきます。
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2014/09/27(土) 02:50:47.76 ID:3lljHSEyo
台所の脇、壁に掛けられたカレンダーには今日の日付に大きな赤いマルが付いています。
さらに言えば、翌月分にもその翌月分にも、今日と同じ月末の日曜日に赤いマルが。
日曜日が待ちきれない姫様がぐりぐりと、色えんぴつで付けたマルです。
「これであと何日待てば良いか、すぐ分かりますね!」と嬉しそうに言っていたのをよく覚えています。
あの時の姫様、ほんとうに嬉しそうでしたね。
以下略
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2014/09/27(土) 02:52:15.20 ID:3lljHSEyo
◆ ◆ ◆
霞さんのアパートに到着したのは三時すぎ。少しだけ小腹が空いてくる頃合いでした。
ここに来る途中、駅前のデパートでお土産に洋菓子を買ってきたのは正解だったかもしれません。
以下略
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2014/09/27(土) 02:53:37.80 ID:3lljHSEyo
◆ ◆ ◆
食卓に丸いお皿が置かれ、二人分のマーマレードが用意されました。
椅子に座る私の向かいに、霞さんが同じく座ります。
以下略
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2014/09/27(土) 02:56:14.90 ID:3lljHSEyo
「……んっ」
口に手を当てる霞さん。
「……美味しいわ」
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2014/09/27(土) 02:59:51.24 ID:3lljHSEyo
◆ ◆ ◆
「……そんなわけで、時々家で近所の子を預かったりしてるのよ」
「へぇ。一瞬、霞さんの子かと思っちゃいましたよ」
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2014/09/27(土) 03:01:37.76 ID:3lljHSEyo
「あらあら……これでも毎日苦労してるのよ? まだまだ慣れそうにはないわ」
とは霞さんの談。
ですが、そうは言いながらも、次には必ずこんな言葉を言うのでした。
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2014/09/27(土) 03:05:32.67 ID:3lljHSEyo
◆ ◆ ◆
私が霞さんを連れて霧島神境に戻ったころには、あたりはすっかり夜の闇に包まれていました。
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2014/09/27(土) 03:07:39.94 ID:3lljHSEyo
「ただいま帰りましたよ」
暖かな光が漏れ出す戸をスライドさせ、屋内へ。
そんな私たちを出迎えたのは、やっぱり姫様でした。
廊下の奥からぴょこりと顔を出し、私たちの姿を見るやいなや、ぱっと表情が明るくなります。
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2014/09/27(土) 03:09:21.25 ID:3lljHSEyo
「それじゃ、遅くなっちゃったけれど……みんな晩ご飯はまだなのかしら?」
「はいっ。初美ちゃんも、春も、みんなで待ってました!」
「そう。それじゃ、さっそく準備するわね」
そう言って、霞さんはぐいと着ていたセーターの袖をまくりました。
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2014/09/27(土) 03:10:51.90 ID:3lljHSEyo
「それじゃ、いただきましょうか」
「はいっ! では……」
ぱんっ。
手を合わせる音に続くのは、
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2014/09/27(土) 03:14:21.01 ID:3lljHSEyo
「あんまり急いで食べちゃ身体に悪いわよ」
「霞ちゃんっ。これ、とても美味しいです!」
二口目もごくりと飲み込み、姫様は霞さんに屈託のない笑顔を向けました。
それに連鎖するように、
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2014/09/27(土) 03:16:15.50 ID:3lljHSEyo
◆ ◆ ◆
「巴ちゃん」
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14
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2014/09/27(土) 03:20:21.40 ID:3lljHSEyo
「気持ちいいね、巴ちゃん」
「そうだねぇ……」
「……ふふ」
「…?」
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2014/09/27(土) 03:24:48.83 ID:3lljHSEyo
「巴ちゃん」
「なぁに?」
笑いが収まって、しばらくしてから。
ぽつりと、はっちゃんが呟きます。
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2014/09/27(土) 03:26:38.17 ID:3lljHSEyo
「……だけど、嫌いになってるつもりなんてないよ」
「……」
「霞さんにはずっとお世話になってきたし……私だけじゃなくって、六女仙のみんなを支えてきてくれたすごい人だし」
たどたどしい私の言葉を、はっちゃんは黙って聞いてくれました。
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2014/09/27(土) 03:27:36.03 ID:3lljHSEyo
>>15
×:「〜そんなことあるわけないじゃないでしょ」
○:「〜そんなことあるわけないじゃない」
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2014/09/27(土) 03:28:18.20 ID:3lljHSEyo
◆ ◆ ◆
どれだけの時間が経ったでしょう。
覚醒した私の目に一番に映ったのは、
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2014/09/27(土) 03:29:33.50 ID:3lljHSEyo
「……ごめんなさい。迷惑をかけてしまったようですね」
「もうっ。びっくりしたよ」
そう言って、はっちゃんが私の頬をむに、とつまみます。
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2014/09/27(土) 03:30:21.43 ID:3lljHSEyo
「姫様、ずっと巴ちゃんの看病してくれてたんだよー」
「姫様が…?」
「ほんとははるるも一緒だったんだけどね。ちょっと前に「一足先に」って寝ちゃったの」
「…そう、ですか……」
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2014/09/27(土) 03:31:12.73 ID:3lljHSEyo
「巴ちゃん」
そんな私に助け舟を出すように、霞さんが口を開きました。
「初美ちゃんから聞かせてもらったわ。……ごめんなさいね。知らないうちに、あなたを苦しめていたみたい」
以下略
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