2:おじさん ◆nlCx7YJs2Q[saga]
2014/09/27(土) 20:24:03.12 ID:JLE6BIiyo
まだ若い三十の盛りの頃までは、私も意欲的に農作業に参加していた。
一人県外に就職したものの、何もせずおヨネに授かるのは気も引けた。
それに、まだ幼かった子ども達にも、どうやって我々の食べている米が作られているか、その一端であっても知っていて欲しかったのだ。
3:おじさん ◆nlCx7YJs2Q[saga]
2014/09/27(土) 20:25:40.92 ID:JLE6BIiyo
先程までけたたましい音を立てて作動していた稲刈り機は田んぼの真ん中で停止している。
彼の作業を中断させてしまったわけだ。
4:おじさん ◆nlCx7YJs2Q[saga]
2014/09/27(土) 20:27:10.23 ID:JLE6BIiyo
不意に木陰の中を爽やかな風が通り抜ける。思わずうっとりする涼しさを感じると、これだけ日差しはきついが、今は九月の半ばなのだと実感させられる。
5:おじさん ◆nlCx7YJs2Q[saga]
2014/09/27(土) 20:29:38.09 ID:JLE6BIiyo
あれは私が最後に稲刈りをした年のことだ。
猪が出た。
6:おじさん ◆nlCx7YJs2Q[saga]
2014/09/27(土) 20:30:54.28 ID:JLE6BIiyo
「稲も実がつきすぎると倒れる。まあ、重ぉなるけぇな。コシヒカリやこぉは元々、実が多いけぇ、よう見とかんといけんのんよ」
7:おじさん ◆nlCx7YJs2Q[saga]
2014/09/27(土) 20:32:37.02 ID:JLE6BIiyo
「なんが?」
8:おじさん ◆nlCx7YJs2Q[saga]
2014/09/27(土) 20:34:08.37 ID:JLE6BIiyo
「……俺さ、保育士やっとったことあったじゃろ」
9:おじさん ◆nlCx7YJs2Q[saga]
2014/09/27(土) 20:35:43.33 ID:JLE6BIiyo
どういうことだろうか。
10:おじさん ◆nlCx7YJs2Q[saga]
2014/09/27(土) 20:36:56.49 ID:JLE6BIiyo
こいつは昔から、体力も、頭もそうだが、特に要領はずば抜けていいヤツだった。
まるで他人の心が読めているように振舞えるヤツだった。
11:おじさん ◆nlCx7YJs2Q[saga]
2014/09/27(土) 20:38:02.46 ID:JLE6BIiyo
「あのな、兄ちゃん。俺は要領がええんよ?」
12:おじさん ◆nlCx7YJs2Q[saga]
2014/09/27(土) 20:39:52.18 ID:JLE6BIiyo
「先祖なんか知るか。田んぼじゃって俺が死んだらおしまいでえぇじゃろうが、んなもん。この辺の田んぼはそんな事情で休耕田ばっかりじゃ」
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