13:山梨最高 ◆31XYrFalkuo5[sage]
2014/09/27(土) 23:03:19.47 ID:4btJ32Bz0
§§§§§§§§依頼人の記憶§§§§§§§§
ポストに手紙を投函した直後、今投函したばかりの手紙を手に持った黒いセーラー服を着た少女が目の前に現れた。
その少女はまるで人形のように美しくも可憐で、年のころは13歳くらいに見える。
いや、現れたというのは正しくないかもしれない。
気が付いたらそこは夕焼けに支配された世界だった。
投函する前までは確かに昼間だったのに、周囲を見渡すと美しくも物悲しい夕焼けに染まった田園風景が広がっていた。
自分と少女、そして少し離れた大きな木の下に禿げ頭の老人が立っているだけで、そのほかには誰もいない。
こんな場所に見覚えはない。もしかすると自分のほうがこの場所に急に連れてこられたのかもしれない。
依頼人「だ、誰だい、君は?」
あい「呼んだでしょ? 私は地獄少女、閻魔あい」
少女はそう名乗った。
一瞬、女学校の生徒か何かが大掛かりな冗談をやっているのかと思ったが、血のように真っ赤な瞳から彼女が人間じゃないと気が付いた。
あい「輪入道」
少女が呟くと、木の下に立っていた禿げ頭の老人が、返事をしながら赤い襟巻を翻して消えた。
人が消えたことに驚いていると、目の前に一つの黒い藁人形が差し出された。
首には赤い糸が結ばれている。先ほどの老人の襟巻と同じ赤だった。
あい「受け取りなさい。本当に恨みを晴らしたいのならその赤い糸を解けばいい。
糸を解いたら私と正式に契約を結んだことになる。恨みの相手は速やかに地獄へ流されるわ」
言われるままに糸を解こうとしたが、続く少女の言葉に制止される。
あい「ただし…恨みを晴らしたら、あなた自身にも代償を支払ってもらう。
人を呪わば穴ふたつ。あなたが死んだら、その魂は地獄に堕ちる……
死後、あなたの魂は極楽浄土へはいけず、痛みと苦しみを味わながら永遠にさまよい続ける事になるわ」
そのセリフを聞き終わったときには、周囲の夕日の赤がすべて炎に代わり襲い掛かってきた。
自分の体が焼ける痛みと焦げる匂い。
訳も分からずただ死を覚悟したその時、何事もなかったように手紙を投函したポストの前に一人立っていた。
白昼夢を見たと思って急に恥ずかしくなった。
しかし自分が何かを握っていることに気が付き、それを確認したら恥ずかしさなんて恐怖で上書きされてしまった。
さっき受け取った藁人形がそこにあったんだ。
直後、姿も形もないのに地獄少女の声が耳元から聞こえてきた。
あい「あとは、あなたが決めること」
冬だっていうのに全身汗びっしょりだった。地獄なんかに行きたくない。
こんな藁人形を手放したい。でもそこらに捨てて何かのはずみで糸が解けたら地獄に落ちることになってしまう。
そんなのは嫌だ。地獄少女は解約の手続きを教えてくれなかった。糞、何たる悪徳商法だ。
§§§§§§§§依頼人の記憶終了§§§§§§§§
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