19: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/10/02(木) 19:43:37.35 ID:wGGDvAXqO
「……何が言いたいんですか?」
待っていた、と言わんばかりに口元を歪める臥煙さん。
「余接が私たちの手によって作られて、もう十年以上が経つ。が、まだ余接を完全にものに出来たとは言えなくてね」
「うちらの目的は、『斧乃木余接』を確立させることや」
「それは、斧乃木余接ではないかつての人格を、『殺し切る』と。そういうことですか?」
斧乃木ちゃんの前の人格なんて、僕が知る訳もない。
だけれど、どんな事情があったにせよ、あの歳で死んで、死んだ後も式神として使役される童女を哀れんではいけないのか。
「死人の為に出来ることなんて、なんもあれへんわえ」
ふと、何かが切れたかのように、急激に心中が冷静になる。
雨の音が一粒毎に聞こえるようだ。
「……影縫さん。先に謝っておきます」
「……?先て、何の先や」
「僕が生きている内に謝っておく、ということですよ」
これ以上、自分を留められる自信はない。
臥煙さんはともかく、影縫さんに殺されない、という保証もない。
……けれど。
「はあ?」
「死体を操るなんてドン引きするようなことを大の大人が何人も揃ってやっておいて、その上達観したつもりでもいるのかよ」
「…………」
だからって、黙っていられる程に僕はまだ歳を食っちゃいない。
ふと、風来の専門家を思い出す。
あいつならこういう時、なんて返すのだろう。
「何が死人に出来る事はない、だ。死体はお人形じゃないんだぞ。いくら中身が枯れたからって、その死体に宿っていた人間にだって感情はあったんだ。人生があったんだ。物語があったんだ。それを無視して蔑ろにして見て見ぬ振りをして自分たちの目的の為だけに斧乃木ちゃんを使役しているというのなら――――」
ああ、胸糞が悪い。
こんなにも気分が悪いのは、いつ以来だろうか。
「お前達は、僕も含めて死人にも劣るクズだ」
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