23: ◆EhtsT9zeko[saga]
2014/10/07(火) 22:32:57.74 ID:hySjMWKmo
「オ前、良イ人間カ?」
とお姉さんに聞いた。
お姉さんはトロールさんをじっと見据えながら
「何が良くて何が悪いかはわからない。でも、そっちがあたしを攻撃しないってんなら、あたしももあんたを切るつもりはない」
としっかりした口調で言った。
それを聞いたトロールさんは黙ってお姉さんを見つめていたけど、しばらくして
「分カッタ」
とだけ言い、またノソっと横穴の中のベッドに横になってグゴゴゴゴっといびきをかきはじめた。
良かった…私は思わず、ふぅ、とため息をついてしまった。
「まさか、こんなところにトロールがいるなんてな…」
お姉さんはいつの間にか額に浮いた汗を袖口で拭ってそういった。
「ごめんね。最初に言っておけばよかったね。私もトロールさんに助けてもらったんだよ」
「なるほどなぁ…まぁ、トロールってそもそもは妖精の類だし、大人しいやつが居たって不思議じゃない、か…」
お姉さんもそういって、ふぅ、とため息をついた。
知らなかった…トロールさんて、妖精さんと同じなんだ?
そんなことを思っていたら、急にグルルルーとお姉さんのお腹が鳴る。
「あっ…だめだ…気を抜いたら力が…」
お姉さんはそういってへなへなとその場に座り込んでしまう。そうだった、お姉さん、お腹すいてるんだったね。
「こっちに来て!すぐにお魚焼いてあげる!」
私はお姉さんの手を取って、反対の腕で転がった薪を何本か抱えて大きな木の下に作られたカマドのところへ向かった。
カマドの中に薪を入れて、あたりで拾った枯葉と枯草をその下に敷く。マッチがないからちょっと大変だけど、私は太いの枝に細いのをこすりつけはじめた。
太い方はちゃんと乾燥していそうだし、これでちゃんと火が着くはず…
「苦労しそうだなぁ」
お姉さんが苦笑いでそういってくる。
「大丈夫、やったことあるから」
「そっか」
私が返事をしたら、お姉さんは少し安心したみたいに笑った。
妖精さんが残りの薪をもってきてくれて、そばにバラバラっと置いてからお姉さんの回りを飛び回って何かを伝えている。
「ん?なんだよ?あぁ、この革袋?」
お姉さんは身振り手振りの妖精さんに言われて、腰のベルトにひっかけてあった袋を手に取った。
「食い物の代わりに薬草も食べちゃったから、からっぽだよ?」
そう言うお姉さんから革袋を受け取った妖精さんが、いつの間にか小さな手に持っていた木苺の実を革袋に入れるマネを繰り返す。
「あぁ、なんだ?木苺取ってきてくれる、っての?」
お姉さんが聞くと、妖精さんはコクコクっとうなずいた。
「あはは、ありがと。じゃぁ、頼むよ。あんまり無理しなくっていいからな」
お姉さんの言葉に、妖精さんはくるっと一回宙返りをすると、そのまま洞穴の方へと飛んでいった。
978Res/1629.26 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。