936: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/12/14(月) 00:43:52.79 ID:jGgpJsLto
私はすぐさま夕ご飯の準備をして、零号ちゃんと一緒に、姫ちゃんに離乳食をあげながらの勇者様と四人して手早く食事を済ませた。
太陽はすっかり沈み、窓の外には月明かりが照り始める。
二の壁の東門の方角に上っていた煙は、食事を始める前に比べると幾分か細く薄らいでいるようにも見えた。
火事、収まったのかな…そうだといいんだけど…
そんなことを思いながら、私は食器をまとめてワゴンに乗せる。
姫ちゃんはお腹がいっぱいになったからか、食べ終えてから少ししてコクリコクリと船をこぎはじめ、食事を終えた勇者様に抱かれて早くも眠りに落ちていた。
「やっぱり、今日はご機嫌だね」
勇者様が不安を隠せていない顔を無理矢理に笑顔を浮かべて言いながら、姫ちゃんをベッドに横たえる。
「うん、今日は寝れるといいね…火事が収まれば、だけど…」
私と一緒に、食器の片づけをしてくれていた零号ちゃんがそう答えながら窓の外に目を向けた。
「煙、少し収まってきてない?」
どうやら、零号ちゃんにもそう見えるらしい。
「うん、そうだね…大事にならなくて済みそう」
私は、零号ちゃんの言葉に自然とそう思えて、ホッと息を吐き出していた。
でも、そんなとき、不意に零号ちゃんが片付けの手を止めて、まるで固まったように動かなくなった。
首だけをゆっくり動かした零号ちゃんは、ややあって視線を宙に漂わせる。
「どうしたの、零号ちゃん…?」
私は当然、そんな零号ちゃんに戸惑ってそう尋ねた。
すると零号ちゃんは、シッと人差し指を立てて目を閉じる。
それからすぐに
「何か、聞こえない?」
と私を見つめて言って来た。
「え?」
私はそう声を漏らしながらも、手を留めて耳を澄ましてみる。
―――!
本当だ。
「今の、何?」
私は、零号ちゃんを見やってそう聞いてみる。
すると零号ちゃんは、もう一度目を閉じ、さっきよりも少し長い時間、耳を澄ませてみせた。
―――!
――!
―――!
誰かの声だ。
ううん、それだけじゃない。
何か、甲高い音がとぎれとぎれに聞こえてくるような気がする。
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