39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 22:13:14.86 ID:Ha53zHbko
「雪が降り始めたら、しばらくサックスもお休みだね」
あいさんは薄闇の中呟いた。
彼女の吐息は白く、外灯の灯りを受けて柔らかく光った。
「雪が降ったら終わりですか」
「指が動かないし、楽器にも悪い」
「……そうですね」
「春になったら、また始めるよ」
あいさんはアルトサックスをケースにしまうと、僕の左肩に頭をそっと乗せた。
それはほんの少しの間だった。すぐに、身体を離すと、ため息を一つ。
僕が彼女を見たのと、彼女が僕を見たのと、同時だった。
互いの目と目を覗き合い、その奥底に横たわるなにかを透かすように。
どちらからか、定かでない。唇に体温を感じた。
蕩けた氷が黒く染まるように凍る夜の中で、それは一層暖かかった。
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