過去ログ - 東郷あい「ピースの匂いがする」
1- 20
39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 22:13:14.86 ID:Ha53zHbko
「雪が降り始めたら、しばらくサックスもお休みだね」

 あいさんは薄闇の中呟いた。
 彼女の吐息は白く、外灯の灯りを受けて柔らかく光った。

「雪が降ったら終わりですか」

「指が動かないし、楽器にも悪い」

「……そうですね」

「春になったら、また始めるよ」

 あいさんはアルトサックスをケースにしまうと、僕の左肩に頭をそっと乗せた。
 それはほんの少しの間だった。すぐに、身体を離すと、ため息を一つ。

 僕が彼女を見たのと、彼女が僕を見たのと、同時だった。
 互いの目と目を覗き合い、その奥底に横たわるなにかを透かすように。

 どちらからか、定かでない。唇に体温を感じた。
 蕩けた氷が黒く染まるように凍る夜の中で、それは一層暖かかった。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
60Res/29.17 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice