10: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/10/08(水) 18:21:15.84 ID:B+mP747VO
002
「お帰りなさい、阿良々木先輩」
千川さんのスタドリ押し売りを弱腰で跳ね除けつつ残業を済ませて家に帰ると、いきなり扇ちゃんがいつもの袖が余っただぼだぼの学生服にエプロン姿、というとてつもないマニアックな姿で台所にいた。
同時にカレーの匂いが嗅覚と共に空腹感を刺激する。
扇ちゃんが鍋の前に立って中身をかき混ぜているのを見るに、カレーを作っているらしい。
なぜここにいるのか、どうやって中に這入ったのか、なんで料理をしているんだ、と疑問は尽きないが、唐突すぎて何から突っ込んでいいのかわからない。
彼女が神出鬼没なのはいつものことだが、今回はあまりにも度が過ぎている。
僕がなんとも言えない表情で玄関に立ち尽くしていると、扇ちゃんはエプロンで手を拭きながらこちらにやって来る。
関係ないけれど、鍋の前に立つ扇ちゃんってすげえ魔女っぽいな……。
「ご飯にします?お風呂にします?それとも私ですか?」
「少なくとも最後のはないな」
「おやおや?反応が薄い上に酷ですね。もしかして裸エプロンをご所望でしたか?」
顔を覗き込むようにそんなことを言う扇ちゃん。
裸エプロンは間違いなく好きだが、扇ちゃんにやってくれと言ったらすんなりやってしまいそうな辺り、軽々には口に出来ない。
だからあえて言おう。
「いや、学生服にエプロンの方が萌える。そのままでいてくれ」
「流石は愚か者の頂点たる阿良々木先輩。フェティシズムの何たるかをわかっていますねえ」
「扇ちゃんこそ中々やるじゃないか」
単なる裸よりも裸エプロンの方がエロいように、裸エプロンよりも学生服エプロンの方がエロチシズムが減少する分萌えるのだ!
そう、あたかもたった一人の兄のために甲斐甲斐しく家事をする妹や女子高生の通い妻を連想させてくれる。
そういう細かいバックグラウンドまで想像してこそ真の萌道だ。
「阿良々木先輩、なんでもいいので思い付いた言葉を言ってみてください」
「奥様はアイドル女子高生!」
「はっはー、吐き気がする程素敵ですね」
うーん、中々に楽しいじゃないか。
こんなパーソナリティまで発揮するとはやるな、扇ちゃん。
まるで八九寺と遊んでいる時のような躍動感を感じる。
さて、楽しいからと言っていつまでも遊んではいられないな。
僕ももう大人だからね。
「で、なんでいるの、扇ちゃん」
「まぁまぁそれは後にして、とりあえず」
鍋を指差してにこりと生気の皆無な笑顔を見せる。
常に笑っているような表情の扇ちゃんだが、笑顔になると少しだけ眼が細くなるのだ。
「カレー、食べませんか?」
僕はその無色の笑顔に、ふと星と何処か共通点を見出したのだった。
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