11: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/10/08(水) 18:24:38.02 ID:B+mP747VO
003
断る理由もなく食卓につく。
正直、家に帰ったら食事があるという状況は地味に嬉しいのだ。
時々、気まぐれにひたぎや妹たちが来たりもするが、食事を作ってくれることはほとんどない。
そんな微かな幸福感の中食べた扇ちゃんの作ったカレーは普通に美味しかった。
というか、レトルトカレーを鍋にあけて煮ていたらしい。
しかも僕の保存食の中からだ。
一体何の為に……と扇ちゃん相手に問うのは問うだけ労力の無駄だろう。
BJ先生も言っていたように、レトルトカレーなんてどう作ったって美味いのだ。
レトルトカレーを不味く調理出来る人間がいたとしたら、それは一種の才能だろう。
それに、男やもめの身としては、形だけでも女の子が作ってくれた、という事実だけで一ランクは味が増す気がするしね。
「ご馳走様、美味しかったよ」
「それは重畳です、お粗末様でした。さてさて、お腹も膨れて万難を排し万全を期したところで本題に入りましょうか」
僕がカレーを食べ終えて牛乳を飲んでいると、正座のまま対面でずっと待っていた扇ちゃんが口を開く。
扇ちゃんは僕が食事をしている間、何も口にはしなかった。
元々食べないのか、たまたま食べてきたのかは分からないが、今まで扇ちゃんが何かを食べているのを見た覚えはない。
「用件というのは他でもありません。私が現れたからには聡明な阿良々木先輩のこと、大方の予想はついているとは思いますが」
「怪異関連、だろ?扇ちゃんが来た時点で覚悟はしているよ」
扇ちゃんは現在、忍野の下で色々と暗躍しているらしい。
らしい、というのは僕は忍野と連絡は取れないし、扇ちゃんも自分から話そうとはしない。
扇ちゃんが何も言わないのなら僕に言うべきことはないし、お互いに過度の干渉はしないのがいつしか僕と扇ちゃんとの間での暗黙の了解となっていた。
まあ、時折LINEで送られてくる会話では普通の女の子としての生活を満喫しているような様子は汲み取れるし、実際は何もしていないのかも知れないのだけれど、それならばそれでいい。
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