過去ログ - 劇場版アイマスで水瀬家に宿泊した志保のお話 抄
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11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/10/12(日) 11:52:17.30 ID:NHNSY0P+o
 レッスン場でもない、話し合いの場でもない。
 人様の家で真夜中に大声を出した自分自身を、それでも抑止することができなかった。

「違うんです……。私たちは、まだ、765プロのみなさんのレベルに追いついていない……。
 練習を重ねて、だんだん上手になっていくことが評価されるのであればなおさら、次のライブで私たちダンサー組のためにパフォーマンスのランクを落とせば、それこそファンが残念がるに決まってる……!
 それが765プロのせいになるかもしれない、私たちのせいになるかもしれない! 誰も幸せになれない!
 なんでそれにみなさんは気づいてくれないんですか! 私たちはプロなんです。悔いしか残りませんよそんなもの!
 いっそ、私たち全員を切り捨ててくれればいいのに!」

 いつのまにか、椅子に腰掛ける伊織さんを見下ろす態勢になっていた。
 じっとこちらを見上げる彼女の表情は、驚くでもなく呆れるでもなく、後輩の訴えをただただ正面から受け止める真剣なものだった。
 他に訴えたいことがあるならもっと続けろ。真一文字に引かれた唇がそう伝えていた。

 これで私が抱えていた鬱憤はすべて吐き出せているだろうか?
 先輩を見下ろしながら自問すると、じわりじわりと他の鬱積が染み出してくるのを認識してしまい、心が次の叫びを上げようと深呼吸をさせる前に再びベッドへ腰を下ろした。

 伊織さんの視線から逃げるように頭を垂らして自分の膝頭を睨みつけた。
 舌腹を上顎へ押しつけ、なおも感情を暴れさせようとする心を押さえつける。

 叫びたくない。冷静でありたい。
 声を出せば出すたび、自分の心に積もっている感情をオモテに外に漏らして自覚してしまうたびに、己の不安が浮き彫りになっていくのが怖い。
 それならば感情を押し殺して心が動揺していない演技をしていれば、それで自分を騙せるはずだ。
 他の人から見た北沢志保はクールで物おじしない人物なのだから、自分自身もそうであれるはずだ。

 そうに違いない。そうでありたい。そうでなければならない。そうしていれば不安を隠すことができる。
 怖いものなど何もない。ライブもすべて成功する。輝かしい未来が待っているはずだ。

 そのはずなのに、両の二の腕を自分自身で抱えてしまっているのはなぜだろう。
 きちんと空調が効いているはずなのに身体を縮こませていないと背筋が震えてしまう。
 悪寒が全身を巡り、肌が粟立っているにも関わらず背中と額にびっしょりと汗をかいていて不快感で顔がゆがむ。


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