187:名無しNIPPER[saga]
2016/02/25(木) 21:50:58.91 ID:ZfHVyDZr0
あまりに簡潔で、当たり前すぎる質問。
故に、誰もが考えもしない事。私も、自分が死ぬかもしれないと分かるまで考えた事はありませんでした。
???「アンタの体は弱りきってる。例え手術が成功しても待っているのは辛いリハビリの日々だ。毎日マズい薬を飲んで力の入らん体を遊ばせる毎日。それに耐えれたとしても、再び腫瘍が出来るかもしれない。そしたら今度こそ手の施しようがないといわれるかもな」
それは、とてもつらい日々なのでしょう。自分の体が動かせないというのは、想像していた以上に心を蝕みます。私も何度不安と恐怖で自分の髪を掻き乱しそうになったことか。
それだけの恐怖と向き合えたとしても、途方に終わる可能性もあるとこの人は言っている。
???「それでも、お嬢さんは生きたいのか」
なんて容赦のない人なんだろう。
そして、なんて親身になってくれる人なんだろう。
試す様に私を見る力強い瞳に、私は答える。
今の私の、全てを込めた言葉で。
海未「私は……生きなきゃいけないんです」
どんな理屈も、理由も必要ない。細かな説明なんて語るだけ無粋というものです。
私の想いは、この一言に全て詰め込んだ。
これ以上、私に言えることはありませんでした。
???「……ふむ、少しはまともな目つきになったじゃないか」
海未「……貴方のお陰で、未練がましくなってしまいました」
???「人間それくらい執念深い方がいい。自分の命くらい我が儘言わなきゃやってられん。子供となれば尚更な。私の娘なんて二十一にもなって子供のままだ」
やれやれと困った様に首を振るお医者様に、私は小さく笑う。
そして、急激に意識が遠のいていく。麻酔が効いてきたのがぼんやりと理解出来た。
???「お嬢さんの心意気は確かに受け取った。安心して眠るといい。次に目を覚ましたら忙しくなるだろうからな」
海未「……はい」
その返事を最後に、私の意識は完全に途切れました。
瞼が閉じられる寸前、マスクで覆われたお医者様の顔に傷の様なものが見えた様な気がしました。
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