過去ログ - 水本ゆかり「恋の話、聞いてもらえませんか」
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12: ◆J6sXPQ/xjk[saga]
2014/10/19(日) 23:41:40.63 ID:0gxa3WZjo

「告白の、ことですけど」

「うん」

「負担になりたくないので、忘れて下さい。私の事はお気になさらず、プロデューサーには、自由に恋愛などしてもらいたいです」

 本心であり嘘でもあるお願いに、プロデューサーは少し考えるようにうむむと唸りました。プロデューサーの幸せが、わたしの幸せでもあるんです。

 ただその幸せを、出来ることなら私の手で届けてあげたい、とか、思ってしまったり。なんて勝手な我が侭だろうと、ため息が漏れてしまいます。

「俺は」

「……はい」

「ゆかりをトップアイドルにするまで、恋愛事に現を抜かす気はない」

 私への返事も含んだ、体の良いお断りの文句、のはずなのですが。やはり私は事務所の皆さんが言うように、少し天然の気があるのでしょうか。

 私が成長しトップアイドルになるまで、待っていてくれるとか、そういう意味じゃないですよね。……違いますよね、恥ずかしいので今のは無しです。

 雲のない空に陽光がきらめいていました。風が吹けば微かに寒くもありますが、陽に照らされている場所、こと好きな人の隣においては、なんだかとても暖かく。だけれどやはり、指先は少しだけ冷たくて。

 手を繋いだりしたら、迷惑ですよね。でも、触れたい。今日だけは、許してもらえたりしないかな。お誕生日プレゼントその二ということで、駄目でしょうか。

 歩幅を合わせゆっくり距離を詰めながら、そろりそろりと手を伸ばしてみます。


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