27: ◆/BueNLs5lw[saga ]
2014/10/29(水) 12:47:08.10 ID:X9aKwQz80
歌い出しは力強かった。オリジナル曲。何も見えないけれど、歌だけが届いていた。
喉にせり上がってきた酸っぱいものが呼吸を遮った。
にこ「っ……」
リズムを取り始める人の壁に押しつぶされる。
にこ(……何なのよ、ホントに)
あそこで注目を浴びているのはココロとココアで。
観客はにこで。
小さな頃は全く逆の立場だったのに。
ステップを一緒に踏んで、タンバリンを叩き。
手を振って、笑ってくれた。
歌って、踊ってとせがまれた。
それが、今やこちらが拍手を送る側だ。
嬉しい。
嬉しい?
嬉しいに決まっている。
そうでないなら、なんだというのだろう。
本当に、なんだというのだ。
本当に――。
にこは1曲目を聞いて、そこを離れた。衝動的だった。
ふらふらと正門へたどり着き、中学校を後にした。
時刻は15時。
まだ、30分は続くだろう。
真姫からの連絡もない。
タクシーに乗る瞬間、喝采が起こった。
にこは振り返ることはなかった。
観客にはなれなかった。
けれど、やっぱり自分はただの少女だった。
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