過去ログ - 勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」
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以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします
[saga]
2016/01/11(月) 23:47:03.12 ID:50uoFRyB0
勇者と神官長の二人は武の国王宮三階のテラスに出ていた。
本日は快晴で空は抜けるように青く、テラスから見下ろせる武の国の街はここからでも活気に溢れているのが分かる。
神官長「突然お邪魔してすまなかったね」
勇者「いえ、暇でしたから……」
柵に手をかけ、眼下の街を見下ろす神官長の姿を勇者は観察する。
かつて善の国で大神官団のトップを務めていた、紛れもなく世界一結界術に長けた偉大なる男。
彼は息子のスキャンダルにより失脚し、善の国より追放された。
罪を犯した息子自身は死刑となった。
そのスキャンダルを暴いたのは他でもない、勇者だ。
本来であれば顔も見たくない相手ではないのかと、勇者は訝しんだ。
神官長「どうしてもお礼を言いたかったものだから」
勇者「礼と申されても……私には心当たりがございません」
恨み言ならともかく、と勇者は心中で付け加える。
神官長「今回の作戦で私を推薦してくれたと聞いたよ。魔王との最終決戦に抜擢されるなど、国外追放となったこの身には過ぎた栄誉だ」
勇者「作戦の成功率を上げるために必要だと判断しただけです。礼を言われるようなことでは……」
神官長「それと……息子の事も、ね」
勇者は言葉に詰まった。
神官長の視線が勇者に向く。
神官長「恥ずかしながら、私は息子があんな闇を抱えていたことなど全く気付かなかった。あいつの凶行を止めてくれたこと、心から礼を言うよ」
勇者「……それも、礼を言われることでは……結果として、彼は命を落としました。であれば、私が彼を殺したも同然です」
神官長「死んで当然だよ。あんな馬鹿息子は」
神官長のその言葉に、瞬時に勇者の頭に血が上った。
お前が、お前らが、アイツに『神官長の息子』であることを強要したから―――!
神官長「―――等と割り切れれば楽なのだがね。流石にそうもいかないものさ」
感情のままに口を開こうとしていた勇者は、続く神官長の言葉を受けて押し黙った。
神官長「生きていてほしかったよ。それが本音だ。だが、仕方がなかった。しようがなかった。私は、息子の命を諦めざるを得なかった」
勇者「……『神官長』という立場故、ですか?」
神官長「正直、私がその気になれば直接処刑場に乗り込んで息子を救出することは出来た。私にはその力があった。しかし私がそれをすれば、善王様の治世に重大な影響を及ぼしていただろう。例外なき必罰。それこそが善の国の根幹。それを、よりにもよって『神官長』の地位にある人間が犯したとなれば、そんな人間を重用していた善王様の能力に疑いが持たれる」
神官長「……結局、あいつを殺したのはどこどこまでも『私が神官長であったこと』に尽きるのだ。あいつを曲げたのは私だ。救わなかったのも私だ。我が身を呪いこそすれ、君を恨んだことなど一度として無いよ」
神官長「だから……ありがとう」
柔らかに微笑んでそう勇者に告げた神官長。
勇者に出来たのは、ただ曖昧に頷くことだけだった。
神官長はどこか遠くに視線を彷徨わせ、まるで独り言のように、最後にこう呟いた。
神官長「……君はどうしてそうやって真っ直ぐに、『伝説の勇者の息子』を貫くことが出来たのだろう」
神官長「君と私の息子は、一体どこが違っていたのだろうね……」
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