過去ログ - 小説的なやつ
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13:原題は『夢の花』です。
2014/11/05(水) 20:29:05.61 ID:7XpzpOnTO

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梅雨が去っていくのと同じころから彼女が僕の家を訪れるようになっていた。

彼女が僕の家に行きたいと言ったのがきっかけだった。
僕は初めのうちは無駄に緊張したり、そわそわしたり、思考を無駄に遊ばせていたりしたけれど、僕たちの間には何にもなかった。
逸って、薬局で買った避妊具はどこにあるのかも分からない。

彼女はレンタルショップから借りてきた映画をよく見ていた。
彼女の家にはテレビが無く、僕の部屋にはテレビがあった。
だから彼女は僕の部屋に来るようになったのだと思う。
彼女が見るのは、僕の知らないタイトルの映画ばかりだったけれど、僕は彼女の隣でほとんどいつも食い入るようにして映画を見ていた。

暗い影のある作品が多かった。
それらは盛大な悲劇的結末を迎えたり、明るい幸せな終わりを迎えたり、冒頭とほとんど変化のない物語だったりした。
つまらないものもあったけれど、全体的には面白いものが多かったように思う。

鑑賞後は僕が作った簡易で味気ない食事を交えながら映画の感想を述べ合った。
彼女は乾いた作品が好きだと言っていた。
例として二人で見た映画の何本かを挙げたけれど、それは僕にとってはそこまで好きな作品ではなかった。
静かなのに、視線を逸らせないほど見入らせる作品ではあったけれど。
僕は少しギャグを含んだ作品が好きだと言った。
その方がフィクションの良さを引き出せている気がするから。

「私たちはお互い感性が違ってるね」

彼女はそれを喜ばしいことのように言った。

「私たちはきっと一生分かり合えないんだろうね」

やはり嬉しそうにそう続けた。
僕はその言葉に哀しみを覚えたけれど。


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