過去ログ - アナスタシア「可憐なる魔獣」
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/15(土) 21:07:37.99 ID:Pp1nkFxlo

結局、今日も夜空は見上げられませんでした。
かじかむ両手を吐息で暖めて、望遠鏡を片付けようと立ち上がります。


 「――それ、覗かせてもらっても良いですか?」


背中から、声を掛けられました。
驚いて振り向くと、そこに立っていたのは優しげな眼をした男の人。

 「ア……どうぞ」

 「ありがとうございます」

場所を譲ると、男の人がそっと望遠鏡を覗き込みます。
見晴らしの良い丘なのに、いつの間に来たのか。スーツにマフラーだけで寒くないのか。
不思議な雰囲気とは裏腹に、レンズを覗く表情はとても楽しげでした。

 「えっと、調整はこのネジですか?」

 「ニェート……こっち、です」

慣れない手つきでくるくるとネジを回します。
さっきまでの調整通りなら、70倍の大きさで三日月が見えている筈です。


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