過去ログ - 阿良々木暦「こよみヒストリー」
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10: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/11/21(金) 22:06:28.47 ID:kVCj7/h70



007



娘が産まれてはや五年近くが経つ。

娘は可愛い。
ひたぎとの子供ということもあって、猫可愛がりである。

ただ、ひたぎの英才教育のお陰で家の中での僕の地位は一番下だ。
具体的には、ひたぎの暴言と傲慢を受け継いでいる様子が垣間見えるのだ。
僕のアホ毛を受け継いでくれたのは嬉しい限りだが、将来が楽しみであると同時に恐ろしすぎる。
恐怖政治の下、ヒエラルキーがは確立されてしまったのだ。
いや待て、僕にはまだ忍がいる。うん。

「どうしたの暦、難しい顔をして」

ひたぎが真面目な表情で覗き込んでくる。

ああ、そんな事よりももっと大きな問題がある。

「……やっぱり、そうだったのね」

僕ももういい年だ。三十路も近い。

なのに、外見が全く変わらない。

高校生の時のままだ。

どうやら僕は、吸血鬼の年を取らない性質を持ち越してしまっていたらしい。

人として生きて行く上で危惧していたことではあったが、楽観視していたと言わざるを得まい。

二十代半ばまではそれも誤魔化せるが、もうそろそろ若いでは通用しない時が来る。

「私一人がいいと言っても、暦は受け容れないでしょうね」

世の中には世間体というものが存在する。

例えひたぎがそのままでいいと言ってくれても、十年以上も全く老けない人間が近くにいたら、周囲の人間は必ず怪しむだろう。

そしてそれはいつか、化物に対する迫害へと変わる。

僕一人ならばまだいい。
が、ひたぎ達にまでとばっちりが行くのだけは絶対に避けたい。

「……私やあの子を気にすることはない……と言っても、無駄ね」

それをしてしまったら、阿良々木暦は阿良々木暦でなくなる。

いつか僕がひたぎに言った言葉だ。

けれども、この状況においてもそんなことを言っているのは、ただの我儘なのかも知れない。

何が正しくて何が間違いかなんて。

僕にはわからなかった。





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