過去ログ - 阿良々木暦「こよみヒストリー」
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15: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/11/21(金) 22:29:02.97 ID:kVCj7/h70



013



思わず家の前で立ち止まる。

自分の家に帰るだけの行為が、こんなにもきついとは、以前は思いもしなかった。

ひたぎに怒られるのが怖い訳じゃない。

どんな種類であれ、例えそれが殺意だとしても、そこに感情の交換があるのならば余地はある。

僕が何よりも恐れていたのは、そう。

人との断絶だ。

怪異は人ありきの存在。
ならば、嫌でも人と関わり生きることが出来る。
いつか僕の事を知る人間がいなくなったとしても、僕に人の部分は残る。

人に片思いをする化物として、僕は――――。

「家の前で何をしているのかしら」

なんて逡巡をしている内に、扉が開く。
出てきたのは勿論、ひたぎだ。

「暦がいなくなること百とんで六日。随分と長い家出だったわね」

言葉が出ない。

何が正解だったのだろう。

キスショットに首を差し出さなければ良かった?

羽川に深入りしなければ良かった?

ひたぎを受け止めなければ良かった?

八九寺に声を掛けなければ良かった?

神原を見捨てれば良かった?

千石に関わらなければ良かった?

何が正解で何が不正解だったかなんて、今となっては無意味な懐古ではあるけれど。

それでも――――。

「お帰りなさい」

何も聞かず、ひたぎは笑顔でそう言った。

……そうか。

どうだって、いいのか。

この身はひたぎの為にある。

それだけでいいのか。

少なくとも、ひたぎのいる、この瞬間だけは。





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