過去ログ - 阿良々木暦「こよみヒストリー」
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19: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/11/21(金) 22:38:53.01 ID:kVCj7/h70



016



「やあ。相変わらず不景気な顔だね、鬼のお兄ちゃん」

忍と袂を分かってからまた幾年と時は流れ、僕がまだ高校生だった頃の知り合いは、片手で数えるほどしかいなくなってしまった。

まず忍、神様である八九寺に、加えて怪異の集合体であり僕の映し鏡である扇ちゃん。

そして、死体を基盤とした式神の斧乃木ちゃん。

臥煙さん達の消息は杳として知れないが、元から死んでいる手折さんを除けばいくら人間離れした彼等でも流石に生きてはいないだろう。
エピソードやドラマツルギーは、まだ生きているのだろうか。

「久し振りだね。五百年振りくらい?」

聞けば斧乃木ちゃんは未だ臥煙一族の下で式神を営んでいるらしい。
前回、最後に会ったのはいつだっただろうか。
さすがに五百年は盛り過ぎだが。

「これ、あげる」

と、斧乃木ちゃんが差し出したのは、一通の手紙だった。
唐突かつ意味不明なものを受け取り、言葉も出ない。

「これは、忍野のおじちゃんが頼んで、影縫のお姉ちゃんがアドバイスして、えっと……か……か……泥舟が形を整えて、臥煙のお姉ちゃんが書いたもの」

懐かしい名前の顔ぶれに、僕は反応出来ずにいた。それにしても貝木の苗字くらい覚えておいてやれよ。

「死にたくなったら開けていいよ、と忍野のおじちゃんから言付かっているよ。中身は鬼のお兄ちゃんの殺し方と、世界の滅ぼし方、だそうだけど」

忍野メメが依頼し、影縫余弦が助言をし、貝木泥舟が整え理を騙し、臥煙伊豆湖が記したもの。

斧乃木ちゃんの言葉の断片から推理するに、恐らくはこの不死の身における自殺の方法と、力の有効活用方法だろう。

それはきっと、彼等が僕に遺してくれた良心か、もしくは。

ありがとう、と礼を言い手紙をポケットに仕舞う。

「開けないんだね」

自分が辿ってきた道筋に後悔や反省は山ほどしたけれど。

死にたいと思ったことは、一度もないからな。





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