過去ログ - 絵里「これは」にこ「恋ではない」
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2: ◆gDTYF1szXU[saga]
2014/11/25(火) 21:53:16.90 ID:gmNfp8uFO
大学卒業後に入社した今の会社は、それなりに規模のある旅行事業を取り扱う企業で。

やりがいのある仕事と頼もしい仲間達に囲まれて、私はそれなりに充実した日々を送っていた。

そしてそれは、にこも同じ。

高校を卒業後、アルバイトの傍らアイドルを目指して努力し続けた彼女は。

しかし私の目から見ても凡才の域を出なかった。

スクールアイドルμ‘Sの確固たる地位を築いた立役者のひとりとはいえ、特別に秀でた才能があるわけでもない。

はっきり言ってしまえば、プロとして生きていけるとは到底思えなかった。

けれど、どうやらそれは私の見込み違いだったらしい。

小さな画面の向こうで躍動する彼女の姿は、もはや凡才でも凡人でもない。

一昨年アイドルを引退して、本格的に女優としての道を歩み始めた矢澤にこ。

あの子の発するパワーは既にひとりの人間としての影響力を超越して、大勢の人々に笑顔と幸福を分け与える巨大な存在として頂点に君臨しつつあった。

そんな彼女と恋人関係にある私は、本当なら世界中の誰よりも幸せであって然るべき筈なのに。

それなのに、泣いてばかりいるのは何故だろう。

彼女の前ですら、上手に微笑むことが出来なくなったのは何故だろう。

私達が女性同士であるせいか。

それとも私があまりに弱すぎた、そのせいか。

「愛しているわ」

そう口にすることさえ、もはや憚れた。痛みの方が、ずっと強くなっていたから。


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