過去ログ - ビッチ(改)
1- 20
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/26(水) 23:49:03.81 ID:incPBixuo

 きっと妹は前から知っていたのではないか。僕と妹が本当の兄妹ではないことを。

 普通に考えれば両親が再婚した時、妹は僕以上に幼かったのだから彼女が真実を覚えて
いることは考えづらういけど、きっと親戚か誰かに聞いていたに違いない。

 だから去年両親から僕たちが本当の兄妹ではないことを知らされたそれ以前から、妹は
僕のことを嫌っていたのだろう。再婚に反対してではなく、多分実の兄妹なら許せること
でも、赤の他人である僕の優柔不断な性格が妹の気に触っていたのかもしれない。

 でもそのことは去年から考えつくしていたことだったし、授業に集中できない僕がその
日一日中考えていたのは妹のことではなくて、今朝出会った少女のことだった。

 ほんの一瞬だけ僕の人生に現われた少女。でも僕と彼女の関わりはその一瞬だけだ。

 彼女のこの先の人生に登場する人物の中に僕の名前はないのだ。そしてもう二度と僕は
彼女と会うことはないだろうし、たとえ偶然に出会ったとしても無視されるかせいぜい黙
って会釈されるかだろう。

 そんな自虐的な考えを僕はその日一日中繰り返していたのだった。

 授業が終わり部活に行こうとしている兄友に別れを告げると僕は学校を出た。校門の外
に出た時、渋沢が今日持ってきてくれるはずのゲームソフトを受け取っていないことに気
がついたけど、それはもう後の祭りだった。



 僕が自宅に着いてドアを開けようとした時、逆側からそのドアが開き妹が出てきた。

 妹は相変わらず中学生とは思えな派手な姿だった。爪には変な原色の色彩が施され冬だ
というのにすごく短いスカートを履いている。アイシャドウも濃い目、手に持っている小
さなハンドバッグはラメが一面にごてごてと派手に刺繍されているものだ。

 僕は思わず今朝出会った彼女のことを思い出して妹と比較してしまった。多分彼女も妹
と同じで中学生くらいだと思う。はっきりとは見ていないので確かとは言えないけど、
彼女は目の前の妹と違って普通に清楚な美少女だった。それは短い僅かな言葉のやり
取りにも表れているように僕は思った。

 何で同じ中学生なのに妹と彼女はここまで違うのだろう。僕はそう思った。

 でも今はトラブルは避けたい。ただいまとだけ妹に向ってもごもご呟いた僕は、これか
らどこかに遊びに行く様子の妹を避けて家の中に入ろうとしたその時だった。

「あんたさ」

 妹が僕に話しかけてきた。

「え」

「今朝どっかの女と相合傘してたでしょ」

 行く手を遮るように僕の正面に立った妹が言った。

「何でおまえが知ってるの」

 いきなりの奇襲に面食らった僕は何とかそれだけ言い返すことができた。

「何でだっていいでしょ。あれあんたの彼女? つうかキモオタのあんたにも相合傘する
ような相手がいるんだ」

 最初僕は正直に偶然出会った女の子を駅まで傘に入れただけだよと言い訳するつもりだ
ったけど、悪意に満ちた妹の声を聞いているとそんな言い訳する気すら失われていった。

「それこそどうだっていいだろ。おまえには関係ないじゃん」

 僕の言葉を聞いた妹は目を光らせた。いつもなら戦闘開始の合図だった。僕は少し緊張
して立ちはだかる妹の方を見た。

「・・・・・・何じろじろ見てんのよ。そんなに女の体が珍しいの? 気持悪いからあたしの体
を見るの止めて欲しいんだけど」

 こんなやりとりは僕にとっては日常のことだ。僕は必死に自分の感情を抑えた。早く妹
にどっかに行ってしまって欲しい。そうすれば僕は一人で心の平穏を保てるのだ。

「あんた、彼女いたんだ。あの子どう見ても中学生くらいだったけど」


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
568Res/1282.16 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice