30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/29(土) 12:03:23.41 ID:L4/wSLr5o
目蓋の裏に描いていたはずの、あの人の姿さえ、紫に包まれて見えなくなった。
私は、急に心細くなる。
プロデューサーさん。早く戻ってきて、私の手を握ってくれないかしら。
本当の声を聞かせてくれないかしら。こんな紛い物の沼から、引き上げてくれないかしら。
耳も、目も、口の中も、体中くまなく紫の靄に侵されて、
私のなかに入り込んだ紫が、お腹の奥底にもたれる。じくじくと火照る。
昼も夜も、明るさも暗さも、あの人の声が覆い隠してしまった。
声と、色と、自分の熱しか分からない。普段の私は、あの人の声に吹き飛ばされてしまった。
紫色に巻かれたままだと、自分とあの人の声の境界がぼやけていくの。
私の体が、内蔵それぞれが別の命のように、骨と肉を拘束具のようにガタつかせて、勝手気ままに揺れ動く。
プレイヤーを握っていたはずの手は、どこかへ投げ出されてしまった。もう声が流れこむのを止められない。
プロデューサーさん。早く戻ってきて、私の手を握ってくれないかしら。
本当の声を聞かせてくれないかしら。こんな紛い物の沼から、引き上げてくれないかしら。
そうしてもらえないと、私は、このまま、戻れないかも知れない……。
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