過去ログ - 苗木「彼女との再会」
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13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/12/03(水) 01:32:05.10 ID:dm2TomSio

「それにしても、まさかこんな所で苗木君と再会出来るなんて、思ってもいませんでした! あの……ここにいるって事は、苗木君も新入生の一人なんですよね?」
「うん。と言っても、僕が入学出来たのはただの運なんだけどね……」
「運……?」
「えっと……『超高校級の幸運』って言って、全国にいる普通の学生の中から、抽選で一人だけ選ばれる枠があるみたいなんだ。それに僕が選ばれて……っと、これが入学通知なんだけど」

制服のポケットから折り畳んである入学通知を取り出し、舞園さんに手渡す。
少しの間読み終わるのを待ち、やがて舞園さんは顔を上げると明るい表情を浮かべた。

「この抽選で選ばれる確率って、とんでもなく低いですよね? 何せ、全国からたった一人なんですし……それに選ばれるなんてすごいです!」
「はは……けど、結局は運のお陰だからね。僕には舞園さんみたいに、何か特別な才能がある訳じゃないから……」
「そんな、謙遜する事ないですよ。……だって、その運のお陰で随分助かった人がいるんですから」
「え、助かった……? い、一体誰が?」
「それはですね……私、です」
「舞園さん……?」

ど、どういう事だろう? 僕の運のお陰で、舞園さんが助かったって……。
そんな風に不思議に思っていると、舞園さんは少し表情を暗くして、それからぽつぽつと心情を吐露し始めた。

「あのですね……私、正直不安だったんです」
「不安……?」
「はい。入学を決意してここに来たのはいいけど、私なんかがこんなすごい所で、本当にやっていけるのかなって……。周りの人達は面識なんて全くない、知らない人ばかりですしね。他の新入生の人達だって……。もちろん、話してみたら親しみ易いと感じる人だっていました。けど……それでも、不安を拭い切る事は出来なかったんです」
「舞園さん……」

……そうだったのか。舞園さんは芸能界で幾つもの場数を踏んでるだろうから、この程度の事なんて物ともしないんだろうなって、僕は勝手にそう決めつけていた。
けど、そうじゃなかったんだ。舞園さんだって僕みたいに、人並みに不安を感じていたんだ……。

「でも、そんな不安を苗木君が取り除いてくれたんです」

舞園さんは話し始めとは打って変わって、今度はさっきまでのように明るい表情で続きを話す。

「知ってる人と……苗木君と再会出来て、また一緒に学校生活が送れる。そうだと分かったら、心の中でつかえてた不安なんて一瞬で吹き飛んじゃいました。これって、すごい事じゃないですか? 他の超高校級の人達にだって出来なかった事です。きっと、苗木君にしか出来なかった事ですよ」
「僕にしか、出来なかった……」
「その運のお陰で……選ばれたのが苗木君だからこそ、私はこうしてほっと安心出来ているんです。だから、ただの運なんかじゃないですよ。私は、苗木君だってすごいと思います」

そう言って、舞園さんはまた満面の笑みを僕に向けてくれた。

……胸の底から、嬉しさがこみ上げて来るのを感じる。まさか僕自身が、他でもない舞園さんの力になれてたなんて……。
そうだよな、僕が舞園さんとこうして再会する事が出来たのだって、この運があってこそなんだ。それなのに、『ただの運』だと貶めるのは間違ってた。
この運は、決してただの運なんかじゃない――歴とした、『超高校級の幸運』なんだ。


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