過去ログ - 苗木「彼女との再会」
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23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/12/03(水) 23:53:06.31 ID:dm2TomSio

「それでも私、すっごく感心したんですよ? まさか自分と同じ学年に、あんな事が出来る人がいるなんて、思ってもいませんでしたから」
「はは……僕も、出来るかどうか不安だったけどね……。それにしても、舞園さんも見てたんだね。気づかなかったよ」
「私以外にもいっぱい人がいましたからね。気づかなくても無理はないです」

鶴を捕まえてから森に逃がすまでの間は、たくさんのギャラリーに柵越しにずっと見られていた。それが何とも照れ臭かったんだけど……あの中に舞園さんもいたんだな。
鶴を抱き抱えて裏の森まで運ぶ僕の姿を、その目で見てくれてたんだ。ひょっとしたら、鶴を捕まえる前から見てくれてたのかも……。

「それでその一件を機に、苗木君の事をちょくちょく見るようになったんです。あの鶴を助けてあげた苗木君と、一度話してみたくて……。卒業して離れ離れになってからは、もう叶わないと思ってましたけど……でも、四年越しにようやく実現する事が出来ました。それだけじゃなく、友達にだってなれて。これも、苗木君が希望ヶ峰学園に選ばれてくれたお陰です」
「舞園さん……」

平凡な僕と高翌嶺の花だった舞園さんに、接点なんてないと思ってた……けど、そうじゃなかった。
舞園さんはあの時をきっかけに、それからずっと見てくれていたんだ。卒業するまで三年もの間、ずっと……。だからこそ、僕と再会出来てあんなにも喜んでくれてたんだ。

……あの鶴の一件だけど、実を言えば中学の思い出の一つだったりする。森に逃がしてやるのは確かに大変だったけど、何だかんだで楽しくもあったから。
鶴に触れられる機会なんて滅多にあるもんじゃなかったし、貴重な経験と言えば貴重な経験だった。そんな思い出が、舞園さんが僕を見るようになったきっかけになってたなんて……。
形こそ違うけど、これも一種の『鶴の恩返し』と言えるんじゃないだろうか。

「今朝は本当にびっくりしましたよ? 誰かが転んじゃったみたいなので駆け寄ったら、あの苗木君だったんですから。夢みたいでした。……でも、夢じゃないんですよね。だって、こうして目の前でお話してるのは、紛れもなく苗木君ですもんね」
「う、うん」

テーブルの上に置いていた僕の両手を、伸びてきた舞園さんの両手がぎゅっと握り包む。舞園さんの喜びが、温もりを通して僕にも伝わってくるようだった。

「その……そう考えると、何だかドラマチックだね。僕達がこうして再会出来たのって……」
「……うふふ、そうですね。ドラマチックですよね。苗木君が主人公で、私がヒロインです」
「は、はは……舞園さんがヒロインはともかく、僕が主人公は似つかわしくないけどね」
「そんな事ないですよ? 私はぴったりだと思います」
「そ、そう……?」
「はい! ……でも、ヒロインって何か照れ臭いですね。自分で言っておいて何ですけど……」

舞園さんは僕の両手から手を離すと、今度はほんのりと赤らんだ自分の両頬に添えた。照れてる舞園さん、すごく可愛い……。
でも、照れ臭いのは僕だって同じだ。舞園さんがヒロイン……少し意識するだけでも、頬は更に熱を増していった。

「何か私達の距離って、一気に縮んだと思いませんか? あんなに遠く感じられた苗木君が、今はこんな近くにいますし……」
「うん……そうだね。もし中学の時に話せる機会があったら、今みたいに仲良くなれてたのかな……?」
「きっとなれてたはずですよ。そしたら私、毎日二組に遊びに行ってたと思います」
「もしそうだったら僕、学校に通うのがもっと楽しみになってたと思うよ」

ただ、クラスの男子から羨望と嫉妬の視線の集中砲火を浴びる事になってただろうけど……いや、クラスだけじゃないな。学年全体、下手したら学校全体か……。

「ふふっ、私もです。……でも、それも今では現実の物となりました。これからの学園生活が、毎日楽しみで楽しみで仕方ないんです。何て言ったって、中学の時と違ってこれからは同じクラスですからね。その上席も隣なので、いつでも気軽にお話する事が出来ます。苗木君、いっぱいお話しましょうね。私、どんどん話しかけちゃいますから!」
「……うん! 僕も、いっぱい舞園さんに話しかけるよ」
「はい! 心待ちにしていますっ」

そうして、僕達はお互いににっこりと笑い合った。今まで話せなかった分を取り戻すつもりで、これから舞園さんとたくさん話をしていきたい。色々な話を積み重ねて、もっともっと仲良くなりたいな。



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