過去ログ - 苗木「彼女との再会」
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25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/12/04(木) 23:25:02.64 ID:WsBRUpo9o

「あっ……!」

直後、舞園さんは小さく声を上げて驚く。

「これって、私達のCD……!」

それから驚いた表情のまま、一番上に収められていた物の内の一つを手に取った。――見ての通り、『見られると恥ずかしい』物というのは、舞園さん達アイドルグループのCDだったんだ。

僕が持ってきた娯楽物の中には、このCDだって当然含まれていた。舞園さん達のCDはデビュー曲から最新曲まで、欠ける事なく全て揃えてある。
本人がいるからって持っていかない理由にはならないし、こうして寄宿舎に持ち込んだ訳だけど……でも、いざ見られるとやっぱり恥ずかしいな。

「苗木君、買ってくれていたんですか……?」
「うん。その、まだ言ってなかったけど……実は、僕も舞園さんのファンなんだ」
「わあ……そうだったんですね! 嬉しいです!」

舞園さんはCDを両手に持ったまま、はち切れんばかりの笑顔を僕に向けた。思った通りだ。すごく喜んでくれてる……!

「私達の曲、全部聴いてくれてたんですね」
「もちろん、テレビも観てたよ。舞園さんの出演する番組は、欠かさずチェックしてたし……」

見逃しちゃう時もあったけど、画面越しに舞園さんを観るのをいつも楽しみにしていた。何度も観る為に、録画をした事だってある。
それは中学で舞園さんを遠目に見ていた時も、卒業して離れ離れになった後も――希望ヶ峰学園の入学通知が届いてから、再会出来るのを楽しみにしていた昨夜までも。
ずっと、変わらずそうしていた。

「そうだったんですか……。学校以外でも、私の事を見てくれていたんですね」
「舞園さんは色んな番組に出てたから、卒業後も姿を見る機会は幾らでもあったよ。テレビだけじゃなくて、雑誌なんかでも……」
「あ、雑誌もなんですか? 苗木君にそんなに見てもらえてたなんて……感激です」

舞園さんはしみじみと、感慨深そうに口にする。それは僕の台詞でもある。舞園さんにここまで喜んでもらえるなんて、僕の方こそ感激だ……。

「えっと、舞園さん。それで良かったら、そのCDにサインしてもらってもいいかな……?」
「はい、喜んで! えっと、ペンは……」
「あ、僕が出すよ」

ダンボール箱の中にある筆箱から太めの油性ペンを取り出して、舞園さんに手渡す。実はサインをしてもらえる時の為に、あらかじめ用意しておいたんだ。

「ありがとう御座います。それで、どこに書いたらいいですかね?」
「ジャケットの背景の、色が薄い所にお願いしてもいいかな? 出来たら、それなりに大きめに……」
「分かりました! 少し待ってて下さいね」

ケースから取り出したジャケットを渡すと、舞園さんは僕が指定したスペースにすらすらと文字を書いていく。流石舞園さん、書き慣れてるな。って言うか、字が女の子らしくて可愛い。
クイズ番組なんかでも観た事はあるんだけど、やっぱり生で見ると感動する。何て言ったって、これは僕へ直接宛てられた直筆のサインなんだし……。
程なくして舞園さんはサインを書き終わると、ジャケットを丁寧にケースに戻して、CDを両手で僕に差し出してくれた。

「はい、どうぞ! こんなサインで宜しければ」
「ありがとう、舞園さん! これ、宝物にするね」
「そ、そんな、宝物だなんて……大袈裟ですよ?」
「ううん、そんな事ないよ。今まで以上に大事にするから」
「苗木君……。うふふ、ありがとう御座います。そう言ってもらえて光栄ですっ」

ケース越しに浮かぶ、舞園さん直筆のサイン。『舞園さやか』のすぐ下には、少し小さく『苗木くんへ』とも書かれてある。
『へ』の隣にあるハートマークが何だか照れ臭い……でも、すごく嬉しいや。大切に、大切に保管しよう……。


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