28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/12/04(木) 23:32:05.56 ID:WsBRUpo9o
「舞園さんとは廊下なんかで結構すれ違ってたんだけど、気づいてた?」
「もちろん! すれ違う際には、必ず苗木君を見ていましたから」
「……そうだったの?」
「そうだったんです。目が合うと嬉しかったですよ? と言っても苗木君、いつもすぐに逸らしちゃってましたけど……」
「そ、それはほら……舞園さんと目が合うと、やっぱり何か恥ずかしかったから……」
「……うふふ。苗木君って、恥ずかしがり屋さんなんですね?」
そう言うと、舞園さんは面白そうに僕の目をじーっと見つめ始める。たまらず僕は数秒も経たない内に、舞園さんから視線を外した。
無意識にならまだしも、こんな間近で意識的に見つめられると……。
「あ、また逸らしちゃって。そんな反応をされたら、もっと見ていたくなっちゃいます」
「も、もう。かわかわないでってば」
「あはは、ごめんなさい、ついつい。まあ、恥ずかしがり屋さんなのは、中学の時点で薄々感づいてましたけどね。出来たら、もうちょっと目を合わせて欲しかったですけど」
「ご、ごめん……」
「あ、別に気にしなくていいんですよ? だってこれからはすぐ側で、好きな時に合わせる事が出来ますもんねっ」
「……うん」
あの時はお互いに見ているだけの関係だったけど、今は違う。目を合わせるだけじゃなく、仲良く話す事だって出来るんだ。
他の人に向けられていたこの笑顔だって、今は僕に向けられている――そう思うと、改めて胸の底から嬉しさが込み上げてきた。
「あ……そう言えば舞園さん、僕をちょくちょく見てたって言ってたよね?」
「はい。学校の色んな所で、色々な苗木君を見ていました」
「えっと、具体的にはどんな所を見てたの? 良かったら教えて欲しいな……」
「もちろん構いませんよ。例えばですね……」
舞園さんは口元に人差し指を添えて、中学の時を懐かしむように話し始める。
「登校して教室に向かう時の後ろ姿とか、教室でお友達と楽しそうに話している所とか、窓越しにグラウンドから校舎に入ってくる所とか、美味しそうにお弁当を食べている所とか。それから……飼育委員のお仕事で動物と触れ合ってる所も、他の生徒の落し物を拾って渡してあげている所も、プリントの束を持ち抱えて階段を昇る所も、一生懸命綺麗にしようとお掃除をしている所も。他にもまだまだ、数え切れないくらいあります」
「……そんなに、見てくれてたんだね」
舞園さんが遠目に僕を見る情景が、次々と頭の中に映し出されていった。何で気づかなかったんだろう、当時の僕は。そんなに舞園さんが見てくれてたって言うのに……。
出来るなら、当時の僕に教えてやりたい。舞園さんがいっぱい見てくれてるぞ、って。
「あ、筆箱の中身を全部廊下にバラまいちゃった所とか、外の水道でびしょ濡れになっちゃった所なんかも見ていましたよ?」
「そ、そういう所はあんまり見て欲しくなかったかな……」
そんなかっこ悪い所まで……。まあ、ちょくちょく見てたなら見られて当然かもしれないけど。
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