過去ログ - ほむら「向日葵と傷」
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24: ◆FLVUV.9phY[sage]
2014/12/06(土) 16:56:38.01 ID:x2ueaAjJo

★◎


 邸宅、そう呼べるほどの大きな屋敷の一室でダイヤモンドのように煌めく少女が眠る。
 傍らには漆黒を纏いし愛の化身たる少女が付き添う。

 白の少女の顔色は優れず、彼女自身ともいえる結晶の輝きも鈍い。
 大粒の汗は顔に留まらず、全身を濡らして寝間着すら滴る勢いだ。

 黒の少女の手には魔女の卵たるグリーフシードと積み上げられたタオルの山。

「織莉子、頼むよ。死んだりしたら嫌だよ」

 彼女は休む暇もなく看病をし続けている。
 其の献身はまさしく愛が成せる業だった。

 焦燥と怒りが彼女の精神を圧迫している中で、それでも彼女は『愛』を見失わない。
 何故ならばそれが彼女にとって総てであり生きる理由であるからだ。

「織莉子、ごめんねまた着替えさせるよ。もう何度も、見ちゃったけどさ。勝手に服を脱がせる私を許して」

 顔の汗を一通り拭い去ると、汗を吸い込んでずぶ濡れになった寝間着へと手をかけ、丁寧に脱がせていく。
 汗ばみ、滑りがよくなっている体をがっしりと支え、上着を脱がせ、下穿きを脱がす。
 腹部と胸部、首筋に右足と右腕、大きな傷跡が残っていた。

 傷自体は塞がっているため、痛みは無いだろうがそれでもその生々しさは驚嘆に達する。

「ごめんよ、織莉子。私なんかを庇ってくれたばっかりに、次はあんな失敗をしたりしないから。だから、目を醒ましてよ」

 ゆっくりと、その肢体から噴き出す汗を拭っていく少女は、目から大粒の涙を流して、懇願する。
 首から、足先までゆっくりと時間をかけて汗を拭い去り、新しい着替えを少女へと着せていく。

 少女の横には濡れたタオルの山と、衣服の山。
 流石に看破できない量が積もったそれらを流し見て、項垂れる。

「少し、洗濯してくるから待ってておくれよ」

 山のような衣類を抱えて黒の少女は部屋を出る。目的地は浴場に設置されている洗濯機だ。
 目を開けず、ベッドで休む少女の瞼から、一筋の涙がこぼれる。

 月明かりが部屋へと差し込み、少女を照らす。その姿は聖者の遺体のようですらあった。
 ゆっくりと、情報とノイズが意識の中へと流れ込んでいく。


「キ、リ、カ」


 小さな一つの呟きと共に此岸へと舞い戻る。




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